資産価値は、所与の価値ではなく、任意によって決まる価値である。
資本主義を狂わせる要素は、資産と資本の中に潜んでいる。資本主義は、貨幣経済を基本としている。つまり、貨幣的価値によって捕捉しうる部分には、強みを発揮するが、貨幣的価値によって捕捉し得ない、部分には、弱味となる。その時点、時点において貨幣価値に換算できない部分が、経済の闇を作り出し、それが、資本主義を狂わせる元凶となるのである。その貨幣価値に換算できない部分を一番多く含んでいる部分が、資産勘定と資本勘定である。中でも、資本は、最も抽象的な部分であり、闇の深い部分であるが、その闇を生み出す大本が資産勘定の中に潜んでいる。その大本を解明する前に、資産とは何かを明らかにしたい。
資産は、内側に蓄積された価値である。内部に蓄積された価値というのは、調達された資金をどのように運用したかの結果であるから、資金の運用と表現されることもある。資金の運用に対応するのが、資金の調達である。
企業の実際は、人・物・金・情報・権利にある。それらの要素、多くを含んでいるのが資産である。つまり、経営の成果は、資産という物になって現れる。物といっても無形な物も含んでいる。そして、会計は、人・物・金・情報・権利を金という座標軸に写像する事によって価値の一元化を測った結果である。故に、貨幣的価値に換算して表現される。逆に言えば、貨幣的な価値の背後にある、人・物・金・情報・権利の動きを推し量る必要がある。また、会計は、貨幣的価値からその背後にある動きや姿を推測できるようにしなければならない。それが、会計の重要な役割である。つまり、会計的実体というのは、貨幣や数字に表れた物ではなく、その背後にある人・物・金・情報・権利を指していう。
会計上に現れる数字の裏には、必ず、取引実体が隠されている。そして、数字が属する勘定科目の特性は、実体の属性によって拘束される。例えば、現金・預金の実体は、金であり。売上債権や有価証券、前払い費用の実体は権利。棚卸資産や有形固定資産の実体は物。繰延資産は、情報。無形固定資産や投資等の実体は、権利ないし情報という具合である。
企業が存続するためには、資金が必要である。本来、資金供与は、事業に対してなされるべきだが、現実には、資産的裏付けないと資金調達は、難しい。つまり、実体がない物に対し、金融機関は、なかなか金を貸してくれない。資金調達には、何らかの資産的な裏付けが要求されるという事である。つまり、資産には、資金調達のための裏付け保障という働きがある。
資産が負債の裏付けとなって働くと言う事である。つまり、それは、資金調達の裏付け、質草、担保物件を意味するという点である。負債は、貨幣価値が一定であるのに、資産は、時間の関数であり、一定していない。債権者主義に立った場合、特定の一時点での価値に担保設定すると、資産価値の変動によって資金調達が大きく影響を受けることになる。
住んでいて売れない土地なのに地価が高騰して税金が高くなり、可処分所得が小さくなったケースとか。売却代金に更に高額の税金がかかる言ったケースが生じる。現実には、地価が高騰した時点での地価を基に算定した相続税を土地を売却して払おうとしたら、地価が下落し、土地の売却代金では、大幅に赤字になったというケースである。そのために、自殺した人間までいる。
資産価値を時間の関数だと認識せずにリスクをとった結果である。資産と負債との関係が債権者主義に立つのか、債務者主義に立つのか、その点が重要なのである。しかし、会計上においては、そのような観点は、全く考慮されない。それも、会計の限界の一つである。
資産は、貨幣性資産と非貨幣性資産とに大別される。そして、この非貨幣性資産の中に会計を不安定にする要素が含まれているのである。つまり、非貨幣性資産は、貨幣価値が一定していない。非貨幣性資産は、売上債権、有価証券、棚卸資産、費用性資産、不動産、無形資産、繰延資産、投資等に分類される。貨幣価値が一定していないと言っても非貨幣性資産の性格は、一様ではない。しかも、その時々の政策や経済環境によっても変化するし、また、会計処理の仕方によっても変わってくる。
例えば、売上債権不動産には、不良債権が紛れ込んでいる可能性があり、また、棚卸資産は、減耗や陳腐化している可能性がある。費用性資産は、会計を担当者に裁量権があり、処理の仕方によって費用や利益に大きな差が出る。また、売上債権や有価証券は、流動性が高いが、不動産は、流動性が低いという具合である。
資産の属性の中で一番重要なのは、流動性である。流動性というのは、換金性のことである。換金性が高い順に流動性の高さが測られる。
資産は、資産それ自体が価値を生み出したり、増殖する事がある。つまり、資産の価値と貨幣価値とは、等しくない。資産価値は、相対的価値である。貨幣価値も相対的価値である。故に、資産価値は、常に流動的である。
資産を考える上で重要なのは、時間軸の取り扱い方である。つまり、人・物・金・情報・権利の座標軸にどう、時間軸を絡めるかが重要なのである。会計とは、時空間的体系である。会計の実体が、時間軸と貨幣軸が形成する空間の中で伸縮するのである。それをどのような方程式、関数によって表現するかによって会計上の数値が変わってくる。
故に、会計においては、時間によって実質的価値が変動しない物が安定していると考える。貨幣軸を基軸とする関係から基本的に貨幣価値を一定と見なす。そこから、貨幣の実体である現金を基本とする会計が生み出されるのである。それがキャッシュフローであり、現金主義である。しかし、現金主義やキャッシュフローでは、資産価値を捕捉しきれない。なぜなら、現預金のような、金を基盤とした勘定科目以外の資産は、時間が陰に作用していて、時間的価値が、表面に現れてこないからである。そこに、会計の限界がある。
会計は、取引実体を貨幣軸に照射する事によって成立している。この場合の、貨幣軸は、あくまでも基準である。貨幣といっても現金という実体を持っているわけではない。資本金という言葉が、この性格を端的に現している。資本金というと金庫に現金があると錯覚している者がいるが資本金は、貨幣的実体を持っているわけではない。
資産の中で最も価値が明瞭なのは、貨幣性資産である。
貨幣性資産を流動資産という。この事は、資金をベースとして会計制度は成り立っていることを意味する。つまり、価値が明瞭な上、流動性が最も高い資産が貨幣性資産だと言う事である。この流動性資産が、資産勘定の筆頭にくる。なぜならば、最も流通性があって、価値が、明瞭、安定しているからである。流動性というのは、流通性と言い換えても言い。そして、キャッシュフローでは、最も、中心となる概念である。
資産の中には、目に見えない、形のない物まで含まれる。それが無形資産である。権利と情報を含んでいる。資産の持つ一つの属性を象徴している。つまり、将来、収益をもたらす可能性のある権利や情報を、形のあるなしに関わらず、資産として見なすのである。つまり、資産とは、将来、収益をもたらす可能性のある物なのである。それ故に、資産は、担保価値を持つのである。
不動産は、最も担保価値が高い。反面、不動産は、一番、時間軸に拘束される。最も流動性の低い資産の一つである。ここに不動産の持つ属性がある。つまり、不動産は、負債の裏付けとしての働きが、最も期待される資産だと言う事になる。不動産が、含み経営の中核的な資産と見なされる原因がそこにある。それでありながら、不動産は、一物五価といわれるくらい評価が難しいのである。評価の基準や視点を変えると、全く違った評価が下されてしまう。
増税や減税と言った、根幹的な政策も重要だが、それ以上に、会計制度や税制の変更、規制の強化や緩和といった個々の政策が経営に与える影響の方が実際には大きい。なぜなら、増税や減税といった政策は、社会全般に働く政策だが、会計制度や税制の変更といった個別の政策の影響は、特定の産業や企業に直接的に働きかけるからである。それだけに、特定の産業や企業に深刻な影響を与えるのである。個々の企業は、自社に有利な政策をとろうとする。必然的に、個別の政策が、その時点の経済に深刻な影響を及ぼすのである。この様な、影響を無視して、減税がどうの、増税がどうの、公共投資の波及効果がどうのと議論してもはじまらない。現実は、観念の所産ではないのである。
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