経済の現状

日本経済の現状について

規模別キャッシュフロー


規模は、経済の在り方に決定的な役割を果たしている



経済的資源は、有限である。有限であるが故に、いろいろな制約を受ける。
経済を構成する資源、要素に限界があるから規模の経済が働くのである。
ところが、現代人は、経済的資源を無限だと錯覚しているように見える。現代経済を深刻にしている原因の多くは不足ではなく、過剰、あるいは偏りなのである。

資本主義経済は、初期設定、初期投資の影響を経営が継続している限り受ける。
初期設定、即ち、初期投資は、企業規模を制約する。
それが資本主義では大資本にとって有利に働く。半面、一度投資した資金の影響に、長い年月拘束されることになる。
だからこそ、投資計画や事業計画が不可欠になる。

逆にいうとその国の産業の形は、過去にどの様な投資がされたかによって定まる。

日本の経済構造は、最下層に零細な町工場、下請けというすそ野があり、その上に大企業が君臨するピラミッド構造によって成り立っているとされる。
そして、最下層の零細企業と中小企業、大企業、巨大企業との間には目に見えない壁があるとされてきた。

規模の格差が経済の状態にどのような影響を与えるかを理解しない限り、日本経済のあるべき姿を構築することはできない。
経済は、人為的構造物である。人間が作り出し、生み出したものである。自然になるものとは違う。

重要なのは、為政者がどのような経済、どの様な国づくりをしようとしているかである。経済体制、国家構想を明確にしなければ、拡大均衡型経済政策をとるべきなのか、縮小均衡型政策をとるべきなのかも定まらなない。経済政策に絶対的正解はないのである。為政者が何を望み、そして、どの様な政策をとったかしかない。
拡大成長だけが正しいわけでもなく。規制緩和や競争政策は、絶対的原理でもない。
問題は、国民が何を望んでいて、為政者は、それをどう具現化しようとしているのかにある。
成り行きに任せていいたら望むべき経済状態には、偶然にしかならない。
鍵を握るのは、国民の意志である。
大きければいいというのでもなく。安ければいいというのでもない。
何を望むかである。

経済主体は規模によって差が生じる



会社、家計、政府といった経済主体は、規模によって差が生じる。規模によって生じる差は、構造や組織、性質、性格、生産力、効率という様に多岐にわたる。
また、企業規模には、組織的、資源的限界がある。

組織は、単純に大きければいいというわけではない。また、大規模な主体は、小規模な主体を単純に拡大したというのでもない。
何でもかんでも大きければいい、大きい方が効率がいいというわけではない。何事にも限界がある。
特に、情報による限界が経済にとっては重大な制約となる。

初期設定が爾後の経営の状態を制約する資本主義経済では、規模の差は、経営状態に対して決定的な影響を及ぼす。
ただ、規模と言ってもいろいろな意味がある。
第一に、「お金」の規模である。第二に、人の規模である。第三に、物理的な規模である。

「お金」の規模とは、第一に資本。第二に、総資産。第三に、売上。第四に、利益の規模である。
人の規模とは、第一に、社員数。第二に、顧客、市場規模。第三に、株主。
物の規模とは、第一に、生産量。第二に、販売量。第三に設備、資産等である。

労働集約産業か資本集約型産業かによっても規模の差に質的な違いが生じる。

ここで取り上げる規模は、資本に基づく規模を指す。

規模の差は、バブル崩壊後、零細企業にとってあらゆる面で不利に働いている。しかし、1千万以上の企業にとって規模の差が必ずしも不利に働いているとは限らない。

前   提



量的拡大は質的な変化を伴う。要は、密度の問題である。密度は、量と質の掛け合わせたものである。

今回、主として参考資料としているのは、財務省が作成した「法人企業統計」によっている。
法人企業統計では、金融業、保険業以外の業種は、 平成20年度調査以前において 資本金200万円未満、200万円以上300万円未満、300万円以上500万円未満、500万円以上1,000万円未満、1,000万円以上2,000万円未満、2,000万円以上5,000万円未満、5,000万円以上1億円未満、1億円以上10億円未満、10億円以上の資本金階層別、業種別に層化し、 第一に、資本金1億円未満の各階層は等確率系統抽出により抽出した。第二に、資本金1億円以上10億円未満の法人は資本金による確率比例抽出(資本金を順次合計し、合計額が一定額に達したとき当該法人を抽出する。資本金が一定額以上の法人は全数抽出される。なお、一定額は6億円としている。)により抽出した。3、資本金10億円以上は全数抽出した。
平成21年度調査以後は、 資本金1,000万円未満、1,000万円以上2,000万円未満、2,000万円以上5,000万円未満、5,000万円以上1億円未満、1億円以上10億円未満、10億円以上の資本金階層別、業種別に層化し、1 資本金5億円未満の各階層は等確率系統抽出により抽出した。 2 資本金5億円以上は全数抽出した。
また、金融業、保険業については、資本金1,000万円未満、1,000万円以上1億円未満、1億円以上10億円未満、10億円以上の資本金階層別、業種別に層化し、一つには、資本金1億円未満の各階層は等確率系統抽出により抽出した。二つには、資本金1億円以上は全数抽出した。 (財務省)

法人企業統計は、単に全産業とした場合、金融機関、および保険業は含まれていない。又、回収された調査票を業種別、資本金階層別に集計し、これを母集団に拡大して推計値を算定している。尚、5億円以上10億円未満全数、10億円以上全数と大企業は悉皆調査である。
又、年報で個人企業は対象外となっている。
以上のことから資本金が小さくなるに従って推計値の度合いが大きくなり、情報のブレも大きくなる傾向がある。
ただ企業動向を検証する為には、十分な情報と考えられる。

母集合から解ることは、2013年、全業種の資本金10億円以上の企業数の全規模に対する割合は、0.19%、1億円以上10億円未満の割合は、0.93%なのにたいして、売上に占める割合は、10億円以上の企業の合計が40%、1億円以上10億円未満の売上まで加えると56%と実に過半数を超えるのである。
従業員給与も40%を超えている。ただ給与は、1961年に50%を占めていたのが、40%まで割合を下げている。
労働装備率は、10億円以上の企業と10億円未満の企業とでは大きい差があると同時に、2001年の3023ポイントをピークに2013年、2439ポイントまで下げている。

また、全業種の母集合の数は、2006年頃から275万件を行ったり来たりしているのに対し、10億円以上を超える企業の数は、2003年5686件から2013年5156件と9%ちかく減少している。10億円を超える企業の数が減少している原因が重要なのである。それは、寡占化を意味するのか、また、大企業の数が減少傾向にあるのか。そこが問題なのである。企業数が減少しているのに、売上に占める割合が上昇しているのは何を意味するのか。その点もよく考えながら、分析を進める必要がある。

  
法人企業統計    財務省

規模の均衡



市場経済で重要なのは均衡である。
なぜならば、市場を通じて通貨を、偏りなく循環させる必要があるからである。
偏りがあるとお金は、満遍なく市場に行き渡らなくなる。
偏りを生む最大の原因は格差である。
市場に起きる格差は、企業の規模に基づいて派生する。
大資本は、資本力に物を言わせて収益や利益を独占しようとするからである。
それ故に、公正な競争を促す為には規制が必要となるのである。

規模の分散



資本金が一億円以上の企業は、1%にすぎないのである。
1%に過ぎないという事を頭の隅に置いておいてほしい。

 
法人企業統計    財務省

バブル崩壊後、資本金一千万以下の零細企業は、急速に減少した。2000年以後、また、上昇し始めてきている。高度成長時代は、経済成長に応じて零細企業の減少傾向があったが、経済成長が止まると再び増加傾向になった。

損益上の差



景気の変動に対して売上高は、直接的な影響を受けているように見えるのに、販売費、および一般管理費の変化は、まろやかである。

バブル崩壊後直後から、資本金一千万未満の零細企業の売上は、急激に減少し1997年には、1975年並みまで低下する。そして、その後横ばい状態が続いているのに対して、販売費および、一般管理費はバブル崩壊直後から低下するのではなく、しばらく上昇した後低下に転じていて、また、下げても1975年からみて倍近い水準で止まっている。


  


売上の傾向は、零細企業と中堅企業が正反対の動きを見せたの対して大企業は、中間的な反応を示している。それに対して、販売費および一般管理費は、零細企業が著しく落ち込んでいるのに対して、中堅企業と資本金十億円越える超大企業とは同調した動きをしている。

全体に対する規模別の構成比率を見てみると1%に満たない資本金10億円以上の企業が全産業全規模の40%前後の売上を上げている。

  
法人企業統計    財務省



費用に現れる差


人件費は、零細企業は、バブル崩壊以前、プラザ合意の時から停滞し、バブル崩壊が決定的な作用を及ぼしていることが読み取れる。
それに対して、一千万以上一億円未満の中堅企業は、1997年まで人件費、上昇を続け、2000年まで横這いし、2000年を過ぎて急落している。

中堅企業にとって不景気だからと言って人件費を簡単に抑制できない事がうかがわれる。



利益に現れる違い



件数に占める零細企業の比率は増加しているのに対して売り上げに占める割合は低下している。バブル崩壊後、いかに、零細企業の収益力が低下しているかがわかる。
結局バブル崩壊後のしわ寄せを零細企業が受けていることを暗ににおわせている。

その証左として、零細企業の利益率は急激に低下し、1997年には、赤字にまで至っている。この事からも景気後退やバブル崩壊後やリーマンショックの際、ダメージが一番大きいのが資本金一千万円未満の零細企業だという事がわかる。バブル崩壊やリーマンショックの影響を受けても、資本金が一億円を超える企業は、赤字にまで低下することはなかった。

ただよく見ると85年のプラザ合意後の影響を受けているのは、大企業である事がわかる。しかし、利益率はある程度維持した上に回復も早かったのも資本金十億円以上の大企業である。


  
法人企業統計 財務省

リーマンショックの影響は、大企業と零細企業が受け、資本金が一千万から一億円未満の中堅企業が一番ダメージを受けていない事がわかる。

貸借上の差


貸借上の差は、規模というよりも、産業の構造的な問題として差が出る場合が多い。

例えば、電力やガスといったエネルギー業界は、設備投資が巨額に上るために固定性配列法を採用しているほどである。

また、一つの産業の中にも製造部分と流通部分では、産業の規模に違いが出る。例えば、石油産業は、製造部分は、多額の投資が必要であるため必然的に大規模な企業が多いのに対して小売り部分は、零細な個人事業者によって構成されている。




バブル崩壊後も、資本金一千万以上一億円未満の中堅企業の特異な動きをしており、地価の相場や株価の時価といった実質的資産価値が急落しているというのに、固定負債は上昇し、1998年には、1975年に比べ14倍以上にまで達した後、1998年を頂点にして急落して2003年に、1975年の8倍程度まで下落し、以後横ばいになる。バブル崩壊直後から土地に対する資金供給が急速に細くなっている点を鑑みると、担保価値の下落に対して追い貸しが発生していたことが推測される。

  

キャッシュフロー上の差


長期借入金を減価償却費と純利益との和で割った値は、与信限度額の指標となるといわれている。
バブル崩壊後、資本金1億円未満、1千万以上の規模の企業が急激に上昇している事がわかる。
それに対して規模が大きくなるほどバブル崩壊の影響が小さい。
規模が小さいほど、バブル経済の影響を受けていることが読み取れる。

第二次オイルショック以前は、どちらかというと規模が小さい方が与信限度額の指標は、低かったのがわかる。それがオイルショック後に逆転し、その後中小規模の財務体質が悪化したのが見て取れる。


法人企業統計 財務省

資金需給の観点から営業キャシュフローの増減を見てみると零細企業は、バブルが崩壊した直後から営業キャッシュフローが急速に減少しているのに対して、資本金1千万以上1億円、一億円以上10億円の中堅企業は、1997年ごろまで上昇を続けている。また、10億円以上の巨大企業は、92年頃から2000年まで横這い状態に陥っている。
全体的には、右肩上がりの傾向を維持している。



1989年の大納会で株価が頂点を極めた後、資本金が1億円以上10億円未満の大企業の営業純益は、大きく下げるが立ち直りも早く。際立った動きをしている。ただ、リーマンショックの影響も大きく。景気の変動に敏感に反応しているのがわかる。
それに対して零細企業は、不景気の波をもろに受け、円高不況、バブル崩壊、リーマンショック時に大きく下落し、赤字に転落している。




  






投  資



実物投資は、設備投資と在庫投資の和である。

注目すべき点は、資本金10億円以上の巨大企業を除く企業の実物投資は、91年のバブル崩壊前年が減少しているのに対して、ソフトウェア除く設備投資は、一、二年遅れて下落している点である。
実物投資は、設備投資と在庫投資の和であるから、設備投資と在庫投資の性格の差が出たと考えられる。

  

ソフトウェアに対する投資は、2000年を100として見てみると、零細企業が際立って増えているのに対して一千万円以上の企業ではあまり変わらない事がわかる。
零細企業は、リーマンショック直前までソフトウェアに対する投資は旺盛だたのが、リーマンショックの時一時大きく落ち込むが、その後持ち直して2012年まで続いた。
ただ絶対額でいえば、10億円以上の企業が圧倒的に大きい。絶対額が大きいから変化が表れないのに対して、零細企業は、絶対額が小さいために変化が大きく現れているともいえる。
絶対額から見ると十億円以上の企業ではリーマンショックの影響もあまり受けていない事がわかる。

  

規模による格差



市場に存在する格差による偏向は、規模別に現れる指標を監視すれば現れてくる。
全規模に占める資本金1億円以上の企業が全体に占める割合は、1%足らずに過ぎないのに、売上に占める割合は、50%を超えている。


 



所得の差



総所得が横ばい、即ち、変化がない中で大企業が収益を上げると言う事は、その皺寄せは、中小企業にいくと言う事である。すなわち、格差が拡大するのである。
総所得が変わらないという事は、縮小均衡に向かっている事を意味する。



1%に満たない資本金1億円以上の企業が多い時で50%以上、少ない時でも40%の所得を占めているのである。



資本金十億円以上の大企業と一千万円と零細企業の労働装備率を比べてみる。労働装備率が表す方程式は、
労働装備率=有形固定資産(建設仮勘定を除く)(期首・期末平均)÷従業員数となる。
労働装備率は、資本金10億円以上になると急速に高くなるのがわかる。いかに、大企業が資本集約的であるかがわかる。



設備投資効率=付加価値額÷{有形固定資産(建設仮勘定を除く)(期首・期末平均)}×100


構造の差




法人企業統計 財務省 単位%


法人企業統計 財務省


法人企業統計 財務省


法人企業統計 財務省


規模別の相関関係の違い


実物投資、土地、在庫投資、与信超・受信超、短期金融機関借入金、長期金融機関借入金、売掛金、受取手形、買掛金、支払手形などの項目に対して規模別にどの程度の相関関係を持つののかについて比べてみた。期間は、1975年から2013年までである。
これらの項目は、主として投資と運転資金に係る項目である。規模の差が投資や運転資金に係る資金の流れにどの様な影響を与えるのか。それは経済政策を立案する際に重要な項目となる。経済政策や経営環境の差が個々の企業にどのような影響を与えるかを示しているからである。


資本金一千万円未満。
実物投資 土地 在庫投資 与信超、受信超 長期金融機関借入金 短期金融機関借入金 売掛金 受取手形 買掛金 支払手形
実物投資 1.00
土地 0.81 1.00
在庫投資 0.76 0.38 1.00
与信超、受信超 0.45 0.29 0.54 1.00
長期金融機関借入金 0.89 0.79 0.64 0.49 1.00
短期金融機関借入金 0.76 0.41 0.86 0.71 0.66 1.00
売掛金 0.64 0.42 0.77 0.69 0.59 0.82 1.00
受取手形 0.68 0.47 0.81 0.59 0.64 0.77 0.81 1.00
買掛金 0.71 0.49 0.80 0.56 0.64 0.78 0.89 0.79 1.00
支払手形 0.52 0.27 0.74 0.29 0.44 0.69 0.75 0.79 0.62 1.00

資本金一千万以上一億円未満
実物投資 土地 在庫投資 与信超、受信超 長期金融機関借入金 短期金融機関借入金 売掛金 受取手形 買掛金 支払手形
実物投資 1.00
土地 0.85 1.00
在庫投資 0.69 0.52 1.00
与信超、受信超 0.11 0.06 0.35 1.00
長期金融機関借入金 0.75 0.78 0.71 0.15 1.00
短期金融機関借入金 0.43 0.53 0.72 0.47 0.58 1.00
売掛金 0.47 0.31 0.75 0.53 0.47 0.53 1.00
受取手形 0.44 0.39 0.78 0.56 0.53 0.61 0.80 1.00
買掛金 0.53 0.42 0.76 0.33 0.58 0.47 0.93 0.80 1.00
支払手形 0.33 0.29 0.73 0.35 0.42 0.60 0.80 0.87 0.74 1.00


資本金一千万円未満の零細企業は、短期借入金と売掛金、受取手形、買掛金の相関関係が強い。それに対して資本金一億円以上十億円未満の大企業は、さほど強い相関関係は認められない。

資本金一億円以上十億円未満
実物投資 土地 在庫投資 与信超、受信超 長期金融機関借入金 短期金融機関借入金 売掛金 受取手形 買掛金 支払手形
実物投資 1.00
土地 0.68 1.00
在庫投資 0.61 0.21 1.00
与信超、受信超 0.26 0.07 0.55 1.00
長期金融機関借入金 0.61 0.63 0.67 0.47 1.00
短期金融機関借入金 0.38 0.52 0.51 0.62 0.59 1.00
売掛金 0.36 0.15 0.58 0.47 0.35 0.30 1.00
受取手形 0.32 0.20 0.70 0.42 0.53 0.45 0.71 1.00
買掛金 0.34 0.19 0.47 0.20 0.28 0.16 0.95 0.66 1.00
支払手形 0.16 0.06 0.68 0.38 0.41 0.39 0.65 0.95 0.58 1.00

規模の小さい零細企業は、実物投資、土地と長期・短期借入金、売り上げ債権、仕入れ債務ともに相関関係が強いのに対して、規模が大きくなるにつれて相関関係は弱まっている。規模が小さいと現物資産の担保が要求されている事が覗える。

何を期待しているのか



バブル崩壊後、急速に規模による格差が拡大している事が見て取れる。
格差の拡大どころか、中小企業の経営が起ち居かなくなりつつある事を示している。

結局、全体のパイが増えなければ、取り分を巡って奪い合いにならざるをえない。
市場が成熟したら、量から質へと転換しなければならない。転換できなければ、市場は荒廃し、良質なものから衰退していく事になる。
量から質への転換とは、単に、効率のみを追い求めるのではなく。
生活の潤いやゆとりと言った人間的な側面、文化的な側面を伸ばしていく事でもあるのである。
つまり、自己実現へと向かっていくべきなのである。
それは、大量生産、大量販売、大量消費型の市場から多品種少量生産、多様な販売手段、個性的な消費というように変化していく事であり、大企業より、中小企業が核となった市場形成を促す事である。

文明的で快適な本当の生活空間への変貌を目指すべきなのである。
ところが現在の経済は、経済の成熟化に逆行しているように見える。

重要な事は、我々は、経済に対して何を期待しているかである。
企業が効率よく利益を上げる事のできる社会を目的とするのか、人々が自分の望む職業について豊かに生活する所得を保障できる社会を構築する事を目的とするのか。
それによってとるべき施策は違ってくるのである。

規模の違いによってバブルの影響に違いはあったのか。



バブル崩壊後、不況に対する抵抗力の差は顕著に出ている。
資本金1千万以下の零細企業は、バブルのみならず景気変動の影響を正面から受けている。
さして、規模の格差は、年々広がっているように見える。
1998年、資本金10億円以上の企業が、16兆円の営業利益を上げているのに対して1000万未満の企業は、-52百億円と赤字に転落している。
売上高営業利益率や総資本営業利益率の格差も拡大を辿っている。
規模の違いは、利益に対して決定的な影響を与えている事がわかる。
経済環境の悪化は、弱者に向かうのである。




総括


諸々の指標を見ると経済や市場の変化にたいする規模の違いによる差は歴然としている。
景気変動の影響を真面に受けているのは、零細企業である。

ただ、詳細に見ていくと、単に大きければいい、小さいのは、よくなという訳ではなさそうである。

経済政策を決定する際、為政者は、自分たちは、どの様な市場にしようとしているのか、どの様な経済状態にしようとしているのか、何をしようとしているのかを明確にする必要がある。

拡大均衡を是とするのか、縮小均衡を是とするのかを明らかにする。
いずれにしてもどっちつかず、八方美人的な施策は最悪な事態を招く。

何でもかんでも競争させればいい、規制を緩和しろというのは、宗教的信条にすぎない。
規模の大きさや業態の違いを考慮した上にきめ細かな施策をとる必要がある。

最終的には、直接的手段を講ずるのか、間接的手段によるのかを明確にする必要がある。
直接的手段というのは、価格を統制したり、強引に供与を引き上げたり、仕事の体系を変えようとすることである。




       

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