経済の現状

日本経済の現状について

石油・石炭、生産用機械、建設




予測・計画・実績


経済政策を考える時、一体全体何を期待して立てた政策なのかを検証する必要がある。
進化を求めるべきなのか、それとも、安定を求めているのか。その基本的な思想を忘れてただ経済成長という果実ばかりを追い求めても空しいだけである。
何を求めたのか、それに対して結果はどうだったかを比較検証することによってのみ経済政策の当否は評価できるのである。

何が確かな事で、何が不確かな事か、経済は確かな事と不確かな事を見分ける事が鍵を握っているのである。
収益は、不確かな事である。また、農産物や漁獲高は不確かである。
工業製品の売上は不確かだが生産は確実性に計算することができるし、調節もできる。
費用の計算も比較的確実性が高い。
金融費用の様に名目的な勘定は、確実に計算できる。借金の返済は待ったなしである。手形の不渡りは、企業経営にとどめを刺す。
費用は確実に計算できるといったが、海外から資源を調達している場合は別である。為替や原材料は予測外の変動をすることがあるからである。
ただ、支出は確実性が高く、収入は不確かな事が多い。それが経済をわかりにくくしている。支出は確実で収入が不確かだという事が、経済予測を難しくし、経済の計画性を阻んでいるのである。

不確かな事というのは、自分で決められない事であり、確かな事というのは、自分で決められる事である。故に、不確かな事は、予測し、確かな事は、計画する。そして、その結果が実績である。
予算には、予測に基づく予算と計画に基づく予算の二種類がある。

経済政策というのは、確実な事から、不確実な事を制御することを目的としている。

収入は、不確かな事に基づき、支出は確実な事に基づく。
収入というのは、市場や生産高、需給関係などに左右され、不規則である。また、消費は一定しておらず、周期的に変動している。

どの程度の資金が必要となるかは計算できるが、どのくらいの資金が調達できるかは、正確には、計算できないのである。

経営主体は、不規則な収入を整流し、支出を一定化するための整流装置の役割を果たしている。
この点を理解していないと利益の意味は理解できない。利益は目的ではなくて指標である。

経営主体は、生産を担うだけでなく、分配も担っているのである。
生産効率ばかり求めて分配の効率を疎かにすると、経済は偏り、停滞する。
また、家計は、労働と消費を担っている。この生産者と消費者を結びつける場が市場である。


経済的出来事が構造の違う産業にどのような影響を及ぼすか


産業は資金の流れによって動く仕組みである。
故に、資金の流れが人や物の動きにどのような働きをするかを明らかにする必要がある。
「お金」は、借金によって生産され、投資によって市場に供給される。
資金の流れは、最初に投資として現れる。投資は、経営主体の初期設定である。故に、投資は、経営主体の活動を制約することになる。
何に対してどの程度の投資をするかが、産業の基礎構造を決定づける。設備投資に巨額な投資をする必要のある産業は、初期投資の段階で多くの資金を集めなければならない。そして、その資金は、長い時間をかけて償却する事になる。
最初から多くの労働力を必要とする産業は、設備投資が嵩む産業に比べて初期投資は少なくて済むが、反面に人件費の負担が多くなる。
前者は、資本集約型産業を形成し、後者は、労働集約型産業を形成する。いずれも固定費の比率は高くなるが、その働きに差が生じる。

初期投資の働きは、期間損益とキャッシュフロー、即ち、資金の流れの両面から見る必要がある。
まず第一に、初期投資は、事業計画と事業計画を基とした資金計画として表される。事業計画は、基本的に期間損益の形で表され、資金計画は、現金収支の形で検討される。この二者は一致したものではない。故に、期間損益と資金の流れの両面から経営活動を分析しないと産業の実態を明らかにすることはできない。

初期投資の影響は、期間損益上では費用、資産、負債に対する働きとして現れる。そしてこれらは、固定的費用、基礎的費用を構成する。主として内部要因でもある。

それに対して、収益や原材料費は変動的で予測がつかない資金の流れを形成する。その反面に、投資を決定するための根拠となる数値でもある。収益や原材料は外部要因でもある。

現金収支と費用の関係は、営業利益と営業キャッシュフローの違いとして現れる。即ち、支出と費用の違いが資金の流れをと資金の働きの違いとして数値的に現れるからである。営業利益と営業キャッシュフローの違いは、償却費、運転資金、在庫、金利の差として現れる。この差の要因には時間がかかわっている。

また、金融収支と期間損益から生じる資金の流れの差は、財務キャッシュフローに現れる。長期借入金の返済は、償却費と税引き後利益が原資となる。しかし、この部分は、直接的に結びついているわけではない。また、借入金の返済は、費用として認識されていない。そのために、非償却資産が占める割合が大きくなると資金計画と利益計画が大きくかい離する危険性がある。

これらの構造が産業の収益に決定的な影響を与えている。


経済の重大事が産業に与えた影響


予測のつかない事、予測外の事、想定外の事によって経済は振り回されてきた。
予測しているつもり、わかっているつもりになっていて足元を掬われるような事態が起こり、それが、市場のみならず、社会や生活全般、国家の存亡すら危うくしてきたのである。

不測の事態に対してどのように対処すべきかは、経済学にとって枢要な課題である。間違いは許されない事なのに、根本原因はいまだに解明されていないのである。

市場は変化と連鎖によって動いている。
景気を判断するためには、変化が市場全体の動きにどの様な働きをするかを見極めたいのである。
まず変化がどこに現れ、どこに影響し、何に連鎖するのか。

戦後の日本の経済史において特筆すべき出来事は、ニクソンショック、オイルショック、バブル崩壊、リーマンショックであろう。
今日的な経済の諸問題の根っこは、ニクソンショック、オイルショック、そしてバブル崩壊にあると言える。そして、その流れを決定的にしたのがリーマンショックである。

石油業界、機械業界、建設業界の中でオイルショックの影響を最も受けたのが石油業界であろう。バブルの影響を最も受けたのは、建設業界、そして、リーマンショックの影響は機械業界。この様な違いは、産業の持つ本質的な差に基づいている。それは、産業構造を象徴した出来事である。

戦後の経済に大きく影響を与えた代表的な因子は、石油価格と為替、そして、地価である。
これらの出来事を石油業界、機械業界、建設業界を通して検証してみたい。

卵が先か、鶏が先か。
何が原因で何が結果なのか、それは常に経済問題において悩ましい問題である。
景気が悪いから売り上げが振るわないのか。売り上げが振るわないから景気が悪いのか。

ただ、経済全体が景気が悪いと言ってもすべての産業が一律に振るわないという訳ではない。
他の業界が不況であえいでいる時に着実に業績を伸ばしている産業もあるのである。

為替の動向、原油価格の高騰や下落、地価の動向、株の相場、金利、物価、財政政策等が産業構造に応じて景気に何らかの影響を及ぼしていることは疑いようのない事実である。
為替の変動や原油価格の変動は、すべての産業に一律の働きをするわけではない。
産業の構造の違いによって影響の度合いは違いが生じる。
円高が、好影響を与える産業もあれば、悪影響をもたらす産業もある。

なにが、どこに、どんな働きをどの程度及ぼすのか。それを明らかにしないと本来経済政策は立てられない。


産業構造の違い


産業構造の違いは、経済の動向大きく影響される。

産業を見ていくとき、対外環境の変動に影響を受ける産業とあまり海外の影響を受けない産業がある。
また、対外環境の影響も輸入主導型産業と輸出主導型産業とでは違いが出る。

輸入主導型産業の提携が石油業界であり、輸出主導型産業の典型が生産機械業界である。
また、対外環境の影響を受けにくい産業が土木建設業界である。

その差は、オイルショック、バブル崩壊、リーマンショックにおいて顕著な差として現れている。
オイルショックの影響は、石油業界がもろに受け、バブル崩壊の影響は、建設業界が、リーマンショックの影響を顕著に受けている。
オイルショック、バブル崩壊、リーマンショックの影響は、産業によって違いがあるのであり、一律には語れないのである。

エネルギー業界というのは、典型的な装置産業である。
エネルギーは、情報産業同様、社会のインフラストラクチャーを構成する産業である。
エネルギー産業は基本的に固定資産が総資産に占める割合が大きい。金額も巨額に上る。
そのために、電力業界や都市ガス業界は貸借対照表も固定性配列法を用いているほどである。

石油価格の動向や為替の変動、金利の動向、その時々の金融政策などが、個々の産業や企業にどの様な影響を与えたのかを検証する必要がある。

先ずその為には、石油価格、為替の変動金融政策がどの様な影響を与えたかを具体的な産業に当てはめて検証する必要がある。

石油価格や為替の変動に影響を受けやすい業界と受けにくい業界がある。

石油業界は典型的、エネルギー産業である。
エネルギー産業では固定費の多くを償却費が占める。
それに対して建設業では、固定費の多くは人件費である。
つまり、エネルギー産業は、資本集約型産業であるのに対して、建設業は、労働集約型産業だという事である。

石油業界は、典型的な輸入業界である。それに対して機械業界は、輸出産業型、建設業界は内需型といえる。
利益率を見てみると輸入産業の石油業界と輸出産業の機械業界は、建設業界を挟んで対照的な動きを見せている。

ところがリーマンショック時は、石油業界も機械業界も大きな痛手を受けている。
この様にオイルショック、円高、バブル崩壊、リーマンショックといえど一律に影響を受けているわけではない。



収益構造の違い


収益は、不確かな事であり、計画が立てられない。故に、予測するしかない。不確かな事に基づいて確かな事を計画しなければならない。それが経営状態を不安定にするのである。
何が不確実なのか、それは、収益は買い手があって決まる事であり、買う買わないの決定権は買い手の側にあるからである。
つまり、収益を決めるのは外部要因なのである。

収益を決定づける要因は、市場にある。経営にとって一番根幹にあたる収益が不確かなのである。それが経済を不確かな事にする最大の原因である。

市場は変化と連鎖によって動いている。
景気を判断するためには、変化が市場全体の動きにどの様な働きをするかを見極めたいのである。
まず変化がどこに現れ、どこに影響し、何に連鎖するのかを明らかにすることから始める必要がある。

収益、即ち、売上は何に連動するのか。それが問題なのである。
所得なのか。支出なのか。生産なのか。消費なのか。
経済全体としては、総所得との関係が強いのか。営業余剰としての関係が強いのか。経済を考える上では重要な要素である。
また、原価の変動や人件費とのかかわりはどうなのか。これはそれぞれの産業が置かれている状況、構造、段階によって違いがあり。一律に処理することはできない。

収益は、外的要因としては、市場の規模、市場の状態、市場の段階などの影響を受ける。
市場の状態とは、競争的な市場化、寡占独占的な市場か。市場の段階は、成長段階か成熟段階かなどを言う。
内的要因には、資金力、開発、人材、シェア、財務体質、組織構造、販売体制などである。

収益は、費用に比べて不確実で変動が激しい。
また収益の性格には、余り差がないように考えがちだが、産業の構造によって収益にも違いが生じる。この様な差は主として費用の性格に左右される。

収益の性格は、産業毎に違う。商業と工業では違うし、農業、漁業のような生鮮食料を扱う産業、林業や鉱工業の様に原材料に係る産業と工業も違う。また、生産方式や工程によっても違う。
工業にも、受注産業、組み立て工業、装置産業でも収益の性格は違ってくる。装置産業と連産品産業とでは違ってくる。
また、成長段階期にある産業か、成熟段階にある産業化によっても違ってくる。
判断を誤れば産業全体を狂わせ構造不況業種のような状態に追いやってしまう。
この様な産業の特性を無視して一律の金融政策や財政政策によって景気を制御しようというのは乱暴な話である。また、規制を緩和し、競争さえさせておけば、自然に調和した状態になるというのも一種の信仰の類に過ぎない。市場も産業の特性や商品の特性によって個々独自の構造を持っているのである。

現代社会はなんでも過剰に生産し、市場を物に溢れさせていればいいという思想に支配されている。それが乱開発や乱獲、環境破壊といった問題を引き起こしている。必要性という思想が欠如しているのである。その結果、過剰設備、過剰負債、過剰生産、過剰雇用といった余剰な部分をどう処理するかそれが深刻なのである。
大漁貧乏という言葉があるように余剰な生産は、不足しているのとは違った意味で問題なのである。

問題は、どの様にして適正な生産を維持し、また、公正な分配を実現するかであり、その為にどのような仕組みを構築するかなのである。

大量生産型の装置産業の石油産業と基本的に個別受注産業である建設業とでは、収益に対する考え方はおのずと違ってくる。
不特定多数を相手にした産業と特定の顧客を対象とした産業も収益に対する考え方は違う。それは、同じ産業でも高級と汎用といった顧客の層によって違ってくる。ただ、住み分けがうまく機能している間は、共存できるが、一旦、業者間の境界線が崩れると産業の平準化が進んでいく。

収益は、基本的に売り上げを意味する。売り上げの性質は、顧客によって決まる。
石油業界は、連産品であり、一概に顧客を特定できないが、基本的には不特定多数を相手にしていると言っていいだろう。それに対して、生産用機械は、何らかの特定の生産者を顧客としいる。また、海外にも顧客が多く、為替の変動や海外の景気の影響を受けやすい。
その点は、建設業は内需が主で、基本的に受注生産になる。また、建設業の大手顧客には公共機関があり、景気対策として活用されることもたびたびある。
この様な顧客の差は産業の性格に反映される。


 
法人企業統計 財務省


費用構造の違い


経済は、支出によって成り立っている。

現代社会では、金儲けばかりを重視し、「お金」の使い方は、いい加減とは言わないまでも軽視しがちである。経済を活性化するためには、何でもかんでも金を使えばいいと思っている節がある。そのくせ、なにかというと経費削減である。費用というのは無駄使いで、「お金」を使うの罪悪であるかのごとく言われてしまう。
「お金」は、使わなければ効力を発揮しない。「お金」は、市場に流通することで効力を発揮するのである。ただ、「お金」を貯め込んだけでは、「お金」は、何の役にも立たないのである。金融機関に預ければ別であるが…。いずれにしても「お金」は使わなければ働かない。

手間暇という言葉があるが、手間暇かけるから意味がある事を忘れてはならない。全てをインターネットで直接的に取引してしまうと、かえって不経済な事になる事がある。手間暇をかけたり、費用をかける事はすべて無駄だからと手間暇や費用を省いてしまうと経済が成り立たなくなることもあるのである。

「お金」を使うのが悪いわけではない。肝心なのは、「お金」の使い道である。「お金」の使い道を誤るから、経済が歪んでしまうのである。
「お金」の使い道でまず考えなければならないのが投資である。投資は、金額が大きく、長期間にわたって資金が拘束される性格がある。資金が拘束されている間効力が発揮できるかどうかが問題になるのである。
次にいえるのは、人に対する「お金」の使い方である。どの部分を機械化し、どの部分を人力がになうのか。それが経済の趨勢を決めるのである。

費用の問題は、一企業の問題にとどまらず。経済全体に影響する事なのである。

現代の経済では、費用は、厄介者、悪もの扱いで、費用は無駄だからと、ひたすら、削減すればいいと考えられている。
それは、費用が果たしている経済的働きを全面否定しているような事である。費用には、費用の効能があるのである。
費用こそ、経済の要である。確かに、無駄な費用もあるが、不可欠な費用もある。最たるものは、保安や環境保護、安全、衛生、資源保護などの費用である。利益のためにとこれらの費用を削減すれば、事故や、公害、資源の枯渇、水害や火災などの災害を引き起こす原因となる。
また、めったやたらと人件費を削減すれば、雇用問題を引き起こすし、総所得の減少の原因ともなる。
AI、IT、ロボット化、無人化がはやっている。人はで費用がかかる。一番の費用は、人件費だと費用を目の仇にするが。何でもかんでも、機械化、ロボット化して、競争力を高めればいいというのは、かえって経済の衰弱を招く。

費用構成



費用は、固定費と変動費によって構成される。
費用構造の差は、損益分岐点の差として現れる。即ち、固定費と変動の構成比率の差である。
損益分岐点には、固定費が変動費より大きい固定費型と固定費が変動費より小さい変動費型、その中間の型に大別される。
どちらが是か非かの問題ではなく。初期投資によってこの形は定まる。

また、固定費の性格の違いも産業の性格に大きく影響を与える。固定費の性格の違いは、費用の構成による。費用の構成は、初期投資に制約される。

固定費は、資産を根拠に形成される償却費、地代家賃と労働力を根拠にする人件費、金融費用を根拠として形成される金利がある。償却費は評価勘定であり、方程式の設定の仕方や初期条件の設定によって調節することができるのに対して、人件費や金利は、簡単にはできない。故に、固定費に占める、償却費の割合、人件費や金利の割合は、利益に影響を及ぼす。

装置産業である石油業界は、必然的に固定費に占める減価償却費が大きくなる。それに対して、労働集約型産業である建設業は、固定費に占める人件費の比率が高くなる傾向がある。産業用機械産業は、その中間にある。
減価却費の特徴は、費用と支出が一致していないと言う点である。減価償却費は償却資産を基にして算出される。償却費の計算の基準はあらかじめ決められていて容易に訂正することはできない。投資には、償却資産だけでなく、非償却資産である土地代が含まれている。地代は、償却されないので、そのまま持ち越される。実際の支出は、長期借入金の返済がこれに相当する。
故に、石油業界では、費用である減価償却費と長期借入金、地代が資金繰りを介して関連していると考えられる。その為に、石油会社の決算は、原油価格、為替、地価などが複雑に絡み合っている事が推測される。
それに対して、建設業界の固定費は、人件費を基礎としている。

固定的費用というのは、予め想定できる費用である。損益を考えるとなるべく早い段階で固定的費用を上回る収益を上げようとする。固定費は、売上と相関関係のない費用である。固定費の単価に占める割合は、売上が増えれば増えるほど低下する性格がある。要するに操業率を上げれば価格を安くすることができる。それが大量生産、大量販売の動機になる。
無原則に利益だけを追求させると市場の規模や許容を越えてまで生産することになる。制動装置のない機械のようなものであり、生産的部分が暴走する原因となる。

産業は、産業毎に費用の構造が違う。費用構造の違いによって経済政策は変える必要があるのである。

装置産業である石油産業と個別受注産業である建設業は、費用の性格が違う。また、石油は、基本的に商品格差が小さく、商品の劣化が少なく備蓄が可能である。建設業界は、個別受注産業であるうえに生産期間が長い。また、常設型の固定資産が少ない。

費用の性格の違いを見る場合、付加価値との関連でとらえる必要がある。なぜならば、費用を構成する主要な要素が付加価値だからである。費用は、何に起因しているかによって流動性などの性格が規定される。
つまり、減価償却費、人件費、金利の動向が費用に重大な影響を与えているのである。

費用を構成する要素が何に影響されているのか。それを見極める事が重要なのである。

全業種の売上と費用、付加価値の相関関係を調べてみた。
売上、売上原価、営業利益、付加価値率、販売費および一般経費、原材料費、人経費、全てにおいて強い相関関係がみられる。

売上高 売上原価 営業利益 付加価値率 販売費及び一般管理費 原材料・貯蔵品 従業員給与
売上高 1.00
売上原価 1.00 1.00
営業利益 0.93 0.93 1.00
付加価値率 0.77 0.75 0.68 1.00
販売費及び一般管理費 0.98 0.97 0.89 0.84 1.00
原材料・貯蔵品 0.95 0.96 0.92 0.69 0.91 1.00
従業員給与 0.99 0.99 0.90 0.82 1.00 0.94 1.00

費用構造は、同じ産業、例えば、石油業界では、上流部分である、製造、元売り階層と小売り階層でも違う。必然的に投資の在り様にも差が生じる。

ゼロ金利である今日、支払金利が収益に与える影響は、さほど大きくないが、オイルショック時においては、石油業界の利益に、バブル時は、建設業界の利益に深甚な影響を与えてきた。1975年と1981年、石油業界の営業利益は黒字なのに、経常利益は赤字である。これは明らかに支払金利の影響による。
建設業は1991年を頂点にして支払利息が大きな山を描いている。
支払金利は、当然、借入金の総額によって左右される。つまり、支払金利の上昇は、負債の増大を意味している。



支払利息を見ると石油危機の影響を一番受けているのは、石油業界で、次に影響を受けたのは建設業界である。生産用機械業界は、石油業界や、建設業界程の影響を受けていないように見える。石油危機の影響を石油業界は、強く受けているが石油危機が過ぎるとすぐに下落している。それに対して建設業界は、石油危機が去っても金利負担は軽減していない。
また、バブルの影響を一番受けたのは、建設業界で、次に、生産用機械業界、石油業界は、相対的に見ると一番影響を受けていない。なかでも建設業界のバブル時の支払利息の負担は際立っている。


費用と資金の関係



お金の働きは、「お金」の出入りによって発揮される。「お金」は使わなければ効力を発揮しないのである。

その国の経済は、何に、どのくらい、どの様、いつ支出するかで決まる。
今の経済学者は、「お金」をただ使えばいいと思っている節がある。
何に「お金」を使うかで経済の在り様は違ってくる。
「お金」を何に使えばいいか、そこが問題なのである。

何に「お金」を使うのか。何に「お金」の使い道を集中させるのかは、産業政策の根幹である。

経済は、支出によって成り立っている。
支出の働きは、費用にとして示される。
収益には明細はないが費用には、明細が示される。
それだけ、「お金」は、何に、いつ、どれくらい、どの様に使われたかが重要なのである。なのに、経済学でも経営学でも儲け方ばかり問題にされて使い方は問題にされない。しかし、一番肝心なのは、「お金」の使い道なのである。

経済は費用によって決まると言っても過言ではない。

費用の問題は、一企業の問題にとどまらず。経済全体に影響する事なのである。

中でも「お金」を何に対して使うかが問題となる。

何に対してお金を使うように誘導するのか。それによって経済の在り様は変わってくる。
機械に対してお金を使う様にするのか、人に対してお金を使わせるのか、サービスに対してお金を使うようにするのか。工業製品にお金を使わせるか。それがその国の経済の在り様をきめる。
経済の在り様は、何もせず放っておけばできる様な事ではない。


費用と付加価値の関係



付加価値の意味するところは、金利、利益、地代家賃、配当、人件費、減価償却費、租税である。利益、金利、地代家賃、配当は時間価値を形成し、人件費は所得を減価償却費は設備投資を租税は公共事業、公共投資を背景としている。
物価の上昇人件費の上昇も時間価値を形成する。

付加価値 租税公課 動産・不動産賃借料 支払利息等 減価償却費 販売費及び一般管理費
付加価値 1.00
租税公課 0.96 1.00
動産・不動産賃借料 0.98 0.92 1.00
支払利息等 0.54 0.67 0.39 1.00
減価償却費 0.99 0.95 0.99 0.47 1.00
販売費及び一般管理費 0.99 0.94 0.99 0.47 0.99 1.00

では付加価値を増やせば景気は好転するかというとそうとばかりは言えない。
付加価値を構成する何に資金を供給するか、即ち、「お金」を使うかによっても違いが生じる。
人に「お金」を使うか、機械・設備に「お金」を使うか。

所得の拡大を図るためには、人件費を伸ばさなければならない。しかし、現在の経済政策は、人への投資を圧縮させ機械への投資を促すものである。それでは、いくら付加価値が拡大しても支出は拡大しない。
機械化や合理化は、利益や減価償却費を増やす事で付加価値を拡大するかもしれないが、それは見せかけの成長でしかない。
経費は削減できたとしても雇用には何ら貢献していないどころか失業を増やし、所得を圧迫しているのである。
費用の働きを正しく見極める必要がある。

市場も会社も国も仕組みなのである。
会社は組織なのである。

また、我々は、進化を追求する事を目的とするのか、安定を求めるべきかも明確にしなければならない。
今日の経済の混乱は、政策の誤謬と消費者不在の生産者側に偏った政策によるのである。

成長や進歩のみを追い求める経済でいいのか。
成熟した経済下では、成長より安定を求めるべきではないのか。



付加価値の違い


現代の経済は、経済成長を基礎としている。経済成長の原動力は付加価値である。故に、経済成長を基礎とするならば、付加価値の内容を精査することが求められるのである。
ところが、経済成長論者ほど付加価値の内容を見ようとしない。そして、ひたすら合理化、規制緩和、競争の促進、経費削減などを叫ぶ。
しかし、そのいずれもが付加価値を圧縮する政策であることを忘れてはならない。付加価値を構成するのは、償却費、人件費、金利、地代家賃、利益などである。合理化、規制緩和、競争の促進、経費削減、安売りなどは、付加価値を構成する個々の要素、人件費、償却費、金利、利益などを圧縮する施策だからである。これらを無駄というのならば、付加価値そのものを無だと言っているようなものなのである。
それが現代の経済が停滞している最大の原因である。もし、経済成長を促したいのならば、付加価値を圧縮する事ではなく、有効化、活性化することなのである。

企業法人統計り平成18年度調査以前における付加価値の計算方法は、付加価値額=営業純益(営業利益-支払利息等)+役員給与+従業員給与+福利厚生費+支払利息等+動産・不動産賃貸料+租税公課である。.
平成19年度調査以降は、付加価値額=営業純益(営業利益-支払利息等)+役員給与+役員賞与+従業員給与+従業員賞与+福利厚生費+支払利息等+動産・不動産賃貸料+租税公課で計算されている。
企業法人統計では、付加価値に減価償却費を含まない純付加価値を用いている。

付加価値率というのは、付加価値額を売上高で割った値を言う。
付加価値というのは、固定費である。厳密にいうと付加価値に、減価償却費を足した粗付加価値が固定費だと言っていい。
固定費の性格、この点からも理解できる。また、費用の性格も明らかになる。

つまり、固定的費用を構成する要素は、人件費、金利、地代家賃、そして、減価償却費である。
また、固定費は、販売費、および、一般管理費を指す事もできる。

付加価値率が一番高いのが、生産用機械産業である。一番低いのは石油産業、そして、中間に位置するのが建設業である。
石油産業は、一番付加価値率が低い上に、激しく乱高下を繰り返している。
それに対して一番安定した動きをしているのが建設業である。生産用機械も比較的安定してはいるが、2000年以降付加価値率は、低下の傾向にあり、また変動幅も大きくなってきている。特に、リーマンショック時の低下は顕著に表れている。



付加価値を見ると石油業界の特殊性が浮き彫りされる。
石油業界は、付加価値率が一番低いのに、従業員一人当たりの付加価値が異常に高い。これは石油業界が資本集約型の装置産業であることを示している。
付加価値率が、常に一番低かったのは、石油業界である。それが、一人あたりに還元すると今度は断然、石油業界が高くなる。



石油業界の付加価値を押し上げているのは、減価償却費と租税公課である。
リーマンショック直後は、付加価値に占める租税公課の割合が60%を超えている。



石油業界は、あらゆる局面から税が課せられているのがわかる。
こういう点から見ればどれほど石油業界が国家に貢献してきたかがわかる。

石油・石炭業界の付加価値に関連した相関関係
付加価値 減価償却費 販売費及び一般管理費 支払利息等 動産・不動産賃借料 租税公課
付加価値 1.00
減価償却費 0.48 1.00
販売費及び一般管理費 0.66 0.76 1.00
支払利息等 0.30 -0.24 -0.20 1.00
動産・不動産賃借料 0.66 0.76 0.96 -0.09 1.00
租税公課 0.41 0.83 0.70 -0.37 0.73 1.00

石油業界と建設業界は、租税公課と減価償却費が強い相関関係を示している。それに対して産業用機械は、あまり強い相関関係を減価償却費と租税公課との間で示していない。

産業用機械の付加価値に関連した相関関係
付加価値 減価償却費 販売費及び一般管理費 支払利息等 動産・不動産賃借料 租税公課
付加価値 1.00
減価償却費 0.82 1.00
販売費及び一般管理費 0.96 0.88 1.00
支払利息等 -0.03 -0.30 -0.19 1.00
動産・不動産賃借料 0.82 0.65 0.80 -0.04 1.00
租税公課 0.81 0.54 0.73 0.47 0.73 1.00

産業用機械と建設業界は、付加価値と減価償却費、販売費および一般管理費、動産・不動産賃貸料が強い相関関係を示しているのに、石油業界は、相関関係を示していない。

建設業界の付加価値に関連した相関関係
付加価値 減価償却費 販売費及び一般管理費 支払利息等 動産・不動産賃借料 租税公課
付加価値 1.00
減価償却費 0.95 1.00
販売費及び一般管理費 0.98 0.93 1.00
支払利息等 0.31 0.39 0.15 1.00
動産・不動産賃借料 0.95 0.86 0.97 0.04 1.00
租税公課 0.84 0.81 0.77 0.52 0.76 1.00

業界によって相関関係に大きな違いがあるのがわかる。


利益構造の違い


士農工商の身分社会の頃から利益を卑しむ傾向がどこかあるように思える。
金儲けは醜い事だと思い込み、また、教えてきたような気がする。
しかし、利益を上げる事は悪い事であろうか。利益を追求するのは、間違いであろうか。

確かに、利益を絶対視するのは行き過ぎである。しかし、利益を否定する考えもまた、異常である。
経済が停滞する一番の理由は適正な利益が確保されない事である。
そして、利益が確保されない事によっていたずらに経費削減が行われる。世の中は、安売り業者が持て囃され。不景気になると儲からなくなる、つまりは適正な利益が上げられなくなると経費削減が叫ばれるようになる。あたかも、不景気の原因が費用にあるように言われる。

しかし、不景気が物価上昇の原因は、費用にあるのだろうか。石油価格の高騰、価格の変動などによって適正な利益が上げるのが困難になった時、その責任をすべて費用にかぶせるのは、筋違いである。その結果、人員や人件費の削減がおこなれるのは本末転倒である。角を矯めて牛を殺すような事である。

経営主体は、不規則に変動する収入を整流し、支出を一定化するための整流装置の役割を果たしている。
この点を理解していないと利益の意味は理解できないし、利益によって経営主体を管理、制御する事もできない。
利益は目的ではなくて指標である。

利益は何に連動するのか。
売上なのか。仕入れなのか。費用なのか。
キャシュフローはどうか。これが国の経済を動かしている大事である。

利益は、経営主体の状態や成否を最終的に評価する指標である。ただ、単純に赤字だから悪いと黒字だからいいと決めつけるのは短絡的である。赤字、黒字は結果である。何が原因で赤字になり、何の要因によって黒字になったかが問題なのである。
黒字を生み出す、また、赤字にしてしまう仕組みや構造を明らかにしないと経営主体の実質的、正確な評価はできない。

何が利益に対して決定的な影響を与えるかは、産業によって違う。特に、産業構造と収益構造の違いが大きく関わっている。

以下には、売上と営業利益、経常利益、売上高営業利益率、総資本営業利益率、総資産、純資産との相関関係を全業種、石油・石炭、産業用機械、建設業毎の数値を示した。(石油・石炭は1975年~2013年、その他は、1960~2013年)

石油・石炭業界を除くと利益と売上高は、強い相関関係にある。逆にいうと石油・石炭業界の異常性がこの点からもうかがえる。石油・石炭業界は、売上と利益との間に相関関係が全く見られないのである。

営業利益 経常利益 税引前当期純利益 売上高営業利益率 総資本営業利益率 営業CF  総資産 資本金
全業種 0.93 0.88 0.80 -0.81 -0.88  0.93 0.90 0.98
石油・石炭 0.15 0.13 0.21 -0.17 0.04  0.15 0.24 0.63
産業用機械 0.78 0.80 0.72 -0.65 -0.68  0.86 0.98 0.93
建設 0.80 0.87 0.67 -0.62 -0.77  0.75 1.00 0.92

利益は、主として原価と売り上げにによって影響を受ける。
いずれも変動が激しく予測が難しい。それが経済を不安定にする要因である。
利益は、売上総利益、営業利益、経常利益、特別利益、税引き前利益、純利益と段階的に表す事ができる。
営業利益は、本業の活動を表し、経常利益は、それに金融費用を加味し、特別利益は、本業以外の取引から生じる損益を表し、税引き前利益は、法人税が課せられる前の利益を言い、純利益は、内部留保や配当等の利益処分以前の利益を言う。よく勘違いされるのが、内部留保というから何らかの資金が貯められているという事である。内部留保は余剰資金を貯め込んでいる事を意味するのではなく、借入金の原資や設備更新のための準備金でもある。何らかの資金が貯め込まれているという訳ではない。

建設業界の営業利益の推移は、まるで富士山を見ているかの如くである。それだけ建設業にバブルの与えた影響、バブルの形成期も崩壊期においても大きかったことがよく理解できる。



利益率を見ると石油業界、生産用機械業界ともにリーマンショックの影響が色濃く表れている。
石油業界と生産用機械業界は、輸入産業と輸出産業の差なのか、基本的に対称的な動きをしている局面が度々見受けられる。
それに対して建設業は、顕著な影響は、石油業界や生産用機械業界に比べるとあまり見られない。

生産用機械業界は、経済的出来事に対する反応が現れるまで若干時間的なズレが生じているように見える。

 
法人企業統計 財務省

建設業は、あまりオイルショックのダメージも石油業界や生産用機械業界に比べて受けていないように見える。
反面、建設業は、バブルの影響や財政問題の影響を濃厚に受けている。

 

特別損益は、何らかの突発的な出来事に対し、一時的な形で表れる場合が多い。
オイルショック、バブル崩壊、リーマンショック時にどの様な動きがあったか。また、産業によってどのような違いが、あったかを明らかにする必要がある。



バブルの形成と崩壊において地価の動向が果たした影響は大きい。
バブル形成時と崩壊時において土地勘定がどのような動きをしたか産業別にみてみたい。
バブル形成時と崩壊時に大きく変動したのは、建設業である。
土地勘定に対する資金需給が産業そのものを大きく揺るがしている事が見て取れる。

建設業の利益率は、バブル形成時においても崩壊時においても産業用機械業界や石油業界に比べて安定しているように見える。しかし、水面下での資金の動きが想像以上に大きかったことがうかがえる。

建設業界は本業ではなく、本業以外の部分で経営基盤が動揺していたと考えられる。



資産・負債構造の違い


建設業界も石油業界もオイルショック時には、流動負債の比率が70%を超えていた。
それがバブル時に急速に減らしたが、バブル崩壊前後で石油業界は再び上昇したのに対して建設業界は、順調に流動負債が総資本に占める割合を減らし続け、石油業界とは好対照を示した。
それに対して、建設業と生産機械は、固定資産/資産合計も、流動負債/負債及び純資産額も同じ傾向で変動している。
ただ、位置が違っている。これは、指標の背後にある産業の構造に由来している。
生産機械産業の方が建設業界よりも設備投資の率が高い事がうかがわれる。

石油業界において固定資産の比率が激しく動くのは、売上債権や棚卸資産が総資産に含まれているからである。売上債権や棚卸資産は、売上高や原価の影響を受ける。売上高や原価が激しく変動すると固定資産そのものの値に変化はなくても割合は大きく変化する。比率の動きを分析する場合は、方程式を確認し、方程式のどの部分がどのような動きをしたか、そして、それが他の要素にどのような影響を与えているかを検討する事が重要である。

資産合計と負債及び純資産は同じ数値をとることを前提としている。この仕組みが会計を見るうえで重要な意味を持っている。

 

設備投資効率は、付加価値額を{有形固定資産(建設仮勘定を除く)(期首・期末平均)}で割って百分率であらわしたものである。
設備投資効果率は、設備投資を表す数値が分母になっている事に注目しなければならない。
設備投資効果率からも建設業よりも生産機械の方が設備投資にかける支出が大きい事がわかる。



減価償却率は、減価償却費を(その他の有形固定資産+無形固定資産+減価償却費)で割った値を百分率であらわしたものをいう。



労働装備率は、有形固定資産(建設仮勘定を除く)(期首・期末平均)を従業員数で割った値であり。

 

装置産業である石油業界がずば抜けて労働装備率が高い事がよくわかる。その次、生産用機械産業が続き、労働集約型産業である建設業界は、一番労働装備率が低い。
そして、労働装備率は、付加価値の構成と性格に影響を与える。
減価償却費に影響を及ぼすという事は、営業キャッシュフローにも反映される。


資産と負債と利益の相関関係


資産と負債、利益の相関関係は、一定ではない。
1960年~2013年までの建設業を見てみる。
建設業では、1960年~2013年を通して売上に対して営業利益も、固定資産も、固定負債、純資産、土地も強い相関関係を示している様に見える。しかし、そ1960年~1979年、1980年~1999年、2000年~2013年に区分して相関関係を見てみると時代の変化に応じて前提条件が変わる事で、相関関係にも変化することがわかる。
相関関係も一定、普遍ではなく、状況や市場環境の変化、市場構造の変化によって変わる事を示している。

建設業 1960~2013
減価償却費計 営業利益 売上高 土地 純資産 固定負債 固定資産
減価償却費計 1.00
営業利益 0.81 1.00
売上高 0.99 0.80 1.00
土地 0.90 0.59 0.94 1.00
純資産 0.88 0.54 0.91 0.98 1.00
固定負債 0.94 0.67 0.97 0.99 0.96 1.00
固定資産 0.93 0.62 0.95 1.00 0.98 0.99 1.00

建設業界は、1960年~1979年にかけて減価償却費、営業利益、売上高、土地、純資産、固定負債、固定資産、全てにおいて強い相関関係があった事がわかる。

建設業 1960~1979
減価償却費計 営業利益 売上高 土地 純資産 固定負債 固定資産
減価償却費計 1.00
営業利益 0.97 1.00
売上高 0.99 0.95 1.00
土地 0.99 0.96 0.99 1.00
純資産 0.99 0.97 1.00 1.00 1.00
固定負債 0.98 0.96 0.99 1.00 1.00 1.00
固定資産 0.99 0.96 1.00 1.00 1.00 1.00 1.00

全てに項目において強い相関関係が示されていたのが、営業利益と全ての項目との相関関係が緩くなり土地、純資産、固定負債、固定資産との相関関係は薄れてきた。

建設業 1980~1999
減価償却費計 営業利益 売上高 土地 純資産 固定負債 固定資産
減価償却費計 1.00
営業利益 0.70 1.00
売上高 0.97 0.70 1.00
土地 0.92 0.48 0.95 1.00
純資産 0.91 0.48 0.95 1.00 1.00
固定負債 0.95 0.59 0.98 0.99 0.98 1.00
固定資産 0.93 0.51 0.96 1.00 0.99 0.99 1.00

バブル崩壊後は、売上と固定資産、土地と固定負債、固定資産、固定資産と固定負債を除く全ての項目の相関関係が失われている。純資産と売上、土地、固定負債、固定資産に至っては、負の相関関係を呈している。

建設業 2000~2013
減価償却費計 営業利益 売上高 土地 純資産 固定負債 固定資産
減価償却費計 1.00
営業利益 0.32 1.00
売上高 0.49 0.29 1.00
土地 0.22 0.26 0.71 1.00
純資産 0.06 0.43 -0.12 -0.34 1.00
固定負債 0.44 0.07 0.79 0.80 -0.45 1.00
固定資産 0.43 0.19 0.95 0.80 -0.27 0.87 1.00

バブル崩壊によって建設業界は、個々の要素の相互牽制能力が損なわれ全体を統御する仕組みが破綻したと考えられる。

建設業 1960~1979                         2000~2013
  

1960~1979                              2000~2013
  

営業キャッシュフローの違い


営業キャッシュフローの働きは、営業利益と比較することで明らかになる。
営業キャッシュフローと営業利益の違いがどこの現れるかと言うと、一つは、償却費である。次に、運転資金の差である。第三に在庫である。第四に支払金利である。



運転資金は、運転資金=在庫投資+売掛金増減+受取手形増減+割引手形残高増減-買掛金増減-支払手形増減として表す。

営業キャシュフローで注目するのは、運転資金の増減である。
営業キャッシュフローの変化は、個々の企業固有の問題だけでなく、経済全体の問題、産業全体の問題などの影響がある。この点をよく理解していないと経営や政策、状況などの判断を間違う事となる。

運転資金が増減する原因としては、第一に、経常的な運転資金の増加、第二に、市場や業容の拡大に伴う増加運転資金、第三に、市場や業容の縮小に伴う、一時的な増加である減産運転資金、、第四に、赤字による赤字運転資金、第五に、決算や賞与に伴う決算賞与運転資金、第六に、設備の未払いから派生する未払い運転資金、第七に、長期運転資金がある。
この中で経済変動を反映するものとして経常運転資金、増加運転資金、減産運転資金などががある。



運転資金は、資金繰りの要となる。つまり、企業経営の核となる部分、心臓部となる部分である。
その部分が、建設業ではバブル崩壊期に大きく揺れ動いている。この事によってバブル期に建設業界はかなり資金繰りに振り回されたことが推測させられる。

運転資金の在り様は、産業によって違う。例えば、小売業界は負の値をとるのが常態である。

全業種
実物投資 土地 在庫投資 与信超、受信超 長期金融機関借入金 短期金融機関借入金 売上債権 仕入れ債務
実物投資 1.00
土地 0.77 1.00
在庫投資 0.59 0.36 1.00
与信超、受信超 0.28 0.20 0.74 1.00
長期金融機関借入金 0.60 0.73 0.61 0.55 1.00
短期金融機関借入金 0.28 0.48 0.66 0.70 0.63 1.00
売上債権 0.30 0.11 0.76 0.74 0.39 0.44 1.00
仕入れ債務 0.28 0.08 0.71 0.63 0.32 0.35 0.99 1.00

運転資金は、借入金、特に、短期借入金に影響を及ぼす。
この関係は、全業種を見ると端的に現れている。
運転資金の資金需給は、与信超・受信超に現れる。与信超・受信超と短期借入金、売上債権に相関関係がみられる。
運転資金を構成するのは、資金需給から見ると在庫投資、与信超・受信超、売上債権、仕入れ債務である。これらの項目は、短期金融機関借入金との相関関係がみられる。
在庫投資は、長期金融機関借入金との相関関係がみられる。長期金融機関借入金が相関関係を示すのは、土地や実物投資である。短期金融機関借入金との相関関係も見られる。
在庫投資は、売上債権や仕入れ債権にも影響を及ぼしているのがうかがえる。

一番相関関係が強いのは、売上債権と仕入れ債務である。当然と言えば当然なのかもしれないが、しかし、この相関関係は運転資金が企業の生命線を握っている証でもある。問題は、何らかの因果関係が潜んでいるかである。例えば原油価格の上昇によって仕入れ債務が上昇しそれにつられて売上債権が上昇したのかといった疑問点である。

借入金は、資金の調達力、即ち、担保力が問題となる。
これは減価償却費をどうするかの問題に関連する。
また、借入金の増減は、支払金利に現れる。

何と何が相関関係にあるか。
それに基づいて重回帰分析をするのは有効である。

現代経済で最大の問題点は、経営を構成する要素間、費用と損益、現金収支との相関関係が失われたことにある。そのために、市場も経済主体も制御不能な状態に陥りつつある。



全業種の営業キャッシュフローの相関関係


運転資金は、資金繰りの要、核となる部分である。いうなれば心臓部である。

運転資金は何によって影響を受けるのか。まず正味運転資金を見てみよう。
正味運転資本は、流動資産と流動負債の差を意味する。
流動資産は、売上に連動し、流動負債は、原価、仕入れに連動している。
売上は、市場の状況に依存し、市場の状況を作るのは、需給であり、購買力であり、人口である。また、原価を構成するのは、人件費であり、減価償却費、原材料費、エネルギー価格等である。

運転資金は、正味運転資金に在庫の変動を加えた値だから、市場の需給に連動している。需給は、供給力と消費量による。供給力は投資に影響する。また、在庫は商品の仕入れと評価に連動している。
これらの事を鑑みながら営業キャッシュフローと営業利益との関係を検討する必要がある。

法人企業統計に基づき1975年から2013年までの要素間の相関関係を明らかにして見る。
なず全業種の結果を見る。

減価償却費計 支払利息等 流動資産 棚卸資産 流動負債 運転資金需給 営業CF
減価償却費計 1.00
支払利息等 -0.13 1.00
流動資産 0.92 0.11 1.00
棚卸資産 0.73 0.53 0.87 1.00
流動負債 0.91 0.22 0.97 0.92 1.00
運転資金需給 -0.37 -0.30 -0.42 -0.46 -0.41 1.00
営業CF 0.94 -0.38 0.84 0.53 0.77 -0.27 1.00

全業種では、棚卸資産、流動資産、流動負債は、強い相関関係が見て取れる。その他に、減価償却費と流動資産、流動負債、営業キャッシュフローが強い相関関係があり、棚卸資産と減価償却費、営業キャッシュフローと流動資産、流動負債に相関関係がみられる。
流動資産と流動負債が共振・共鳴しなくなると現金収支の均衡は保てなくなる。つまり、心臓麻痺のような状態を引き起こす。

全業種 営業キャッシュフローと運転資金の相関図


全業種の運転資金と営業キャッシュフローは正の相関関係にある。
運転資金は、棚卸資産+売掛金+受け取り手形+割引残高-買掛金-支払手形をいう。
運転資金増減は、運転資金の前年に対する増減を言い資金移動を言う。

全業種では、運転資金の増減と営業キャッシュフローはほとんど相関関係がないと言えるが後述する石油業界では強い負の相関関係がみられる。

全業種 運転資金需給と営業キャッシュフロー



石油業界の営業キャッシュフローの相関関係



石油・石炭業界の営業キャッシュフローと営業キャッシュフローを構成する要素との相関関係を表してみた。
流動資産、流動負債、棚卸資産の間で強い相関関係にある事がわかる。また、支払利息も流動資産、流動負債、棚卸資産と相関関係がある事が見て取れる。
反対に減価償却費や運転資金の増減と営業キャッシュフローとは相関関係がない事がわかる。営業キャッシュフローだけでなく、減価償却費は、流動資産、流動負債、棚卸資産に関しても全業種と石油・石炭業界は、対称的な結果になっている。

減価償却費計 支払利息等 流動資産 棚卸資産 流動負債 運転資金増減 営業CF
減価償却費計 1.00
支払利息等 -0.22 1.00
流動資産 -0.27 0.71 1.00
棚卸資産 -0.40 0.68 0.96 1.00
流動負債 -0.25 0.78 0.97 0.91 1.00
運転資金 -0.04 -0.01 0.31 0.29 0.27 1.00
営業CF -0.04 0.00 -0.27 -0.24 -0.25 -0.94 1.00

全業種では、減価償却費と営業キャッシュフローとは、強い相関関係がある。それに対し、対称的に石油・石炭業界は、ほとんど相関関係がない。

石油業界の運転資金需給と営業キャッシュフローとは強い逆相関関係にある。
下記のグラフは、石油・石炭業全規模の運転資金需給と営業キャッシュフローの相関関係を表したものである。




投資キャッシュフローの違い


投資は、産業の基礎を構成する。ただ、投資キャッシュフローとして顕著に表れるのは、投資を実行した時である。投資には、初期投資と更新投資に大別される。
投資キャシュフローの損益は、特別利益に現される場合が多い。



石油業界は、典型的な装置産業であり、巨額な初期投資を必要としている。
それに対して、建設業界は、基本的に労働集約型の産業である。
その中間に位置するのが、産業用機械産業である。



財務キャッシュフローの違い


財務キャッシュフローは資金の過不足を表している。財務キャッシュフローは、主として資金の過不足を調整した結果として現れてくるからである。
財務キャッシュフローを見る時、何に対してどの程度の投資がどのような目的でされたかが重要となる。
注意しなければならないのは、投資はキャッシュフロー上は、マイナスとして表示されると言う点である。建設業界がバブル時に大きくプラスしてたのは、投資によるのではなく、過去の投資から得た利益を意味している。
産業用機械は、リーマン色まで順調に推移していた投資が、リーマンショックで急激に冷え込んだことを示している。






為替の影響を受けやすい産業



為替の変動は、原材料費や仕入れ、在庫に反映される。原材料費の変化は、売上総利益や仕入れ債務に影響し、在庫の変化は、営業キャッシュフローに影響する。営業キャッシュフローは、営業利益に反映される。
間接的には短期借入金や金利にも影響する。

石油価格の動向を最も直接的な影響を受けるのは、当然、石油業界である。
石油業界は、石油価格のみならず、為替の変動の影響もまともに受ける。

又為替の変動の影響を受けやすい業界としては、生産用機械産業が考えられる。

逆に、石油価格の変動や為替の変動の影響を受けにくい産業として建設業をあげた。
また、建設業界は、バブルの影響を受けやすい産業である。

利益率を見ると石油産業と生産機械産業は、対称的な動きをしている事が見て取れる。それに対して、建設業は、中立的な動きをしている。
リーマンショックにおいて利益率で一番、打撃を受けたのは、生産用機械業界だが、総資本回転率で見ると石油業界である。しかも、石油業界の方が直後に反応が見えているのに、生産機械は、一年遅れで反応がでいる。それに対して建設業界は、利益率、回転率共に直接的な被害を受けているようには見えない。
この様な差は、個々の産業の持つ構造に由来している。

石油業界は政治に左右される。石油は、国際的戦略物資である。石油は、国際政治や軍事が深く関わっている。
これに対して建設業界も又、政治的な産業である。ただ、石油が主として外部の政治状況に影響されるのに対して、建設業界は内政の影響下にある産業だと言える。

売上を見ると石油・石炭産業は、原油価格や為替に振り回され、乱高下しているのに対し、生産用機械は、リーマンショックの影響が色濃く出ている。それに対して、建設業界は、バブル時代の影響が特別損失の動向などに露わに出ている。

石油業界や機械業界が国外の経済状況や政治事情の影響を受けやすいのに対して、建設業界は、国内の経済状況や政治事情に左右される。

原油価格の影響を受けやすい産業



石油価格の変動の影響を受けやすい産業は、当然ながら石油産業である。
問題は、石油価格の変動が石油業界以外の産業にどのような影響を及ぼし、それが、石油業界や物価といった他の産業や要素にどの様に伝播していったかである。

石油価格の影響を受けにくい産業が、建設業界である。

正味運転資本は、流動資産と流動負債の差を意味する。
流動資産は、売上に連動し、流動負債は、原価、仕入れに連動している。
流動負債が原価、仕入れと連動しているという事は、原油価格の高騰は、石油業界の流動資産と在庫にに多大な影響を与える。

運転資金の増大は、借入金、特に、短期借入金に影響を及ぼす。
借入金は、資金の調達力、即ち、担保力が問題となる。

これらの影響で重要なるのは、個々の事象が生起する時間差である。
原油価格の高騰が最初に影響するのは、どこかである。仕入れ価格に直接影響するのか、それとも即売上価格の高騰を招くのか。それによって運転資金は、重大な影響を受ける。そして、それは借入金の変動、支払利息にも影響がでる。
オイルショックにおいて石油業界は、すっかり悪役になり、その後世間の信用を失ってしまった。しかし、本当にオイルショックによって石油業界は、過大な利益を上げていたのであろうか。その点は、厳しく検証する必要がある。

石油が原油価格と為替とリンク、連動している事は価格の方程式からして明らかである。
問題はどの程度の相関関係があるかであるが、為替の変動、現価格の変動に売上、売上債権、仕入れ債務、在庫などがどの程度の影響を受けているかを明らかにするために重回帰分析をするのは、有効な手立てだと考える。

外れ値


外れ値の存在や働きも無視できるものではない。
外れ値というのは、単純に異常値なのか。
それとも何らかの政治的な意図が働いているのか、それを見極める必要がある。
外れ値が何らかの大きな変化の分岐点であったり、引き金であったりするからである。
外れ値の背後にある事象や現象から何が推測できるか、それが経済に決定的な働きである場合がある。

以下は、石油・石炭業界の相関図であるが、いずれにも外れ値がある。この外れ値は、1979年の際、即ち、オイルショック時の値である。

  


 

財政の影響を受けやすい産業



建設業界の重要性は、公共事業を通じて資金を市場に供給する際、導入部分の役割を果たしているのが建設業界だという点である。
つまり、建設業界は、財政の状態の鏡の働きをしていると考えられる。
なぜ、建設業界得に土木業界は、資金の供給の導入部分の役割を果たしているのかというと、第一に、業界が労働集約型だと言う点が上げられる。又、第二に、業界がピラミッド構造を持ち、頂点に立つ会社は、限られてしながら、広い裾野を持っている点が上げられる。第三に、一つひとつの事業の規模が大きく、長期に亘ってい巨額の資金を集中的に投入できる点にある。第四に、事業目的が公共性が高く、対象となる事業が共同消費性、排除不可能性、非競合性といった公益という目的にも一致しやすいからである。
これらの点は、公共事業が資金供給の導入部分に選ばれる理由であるが、同時に.利権化しやすいとか、不正を招きやすく、腐敗しやすいという体質の原因にもなっている。

公共投資の動向は、建設業界を左右すると考えられるがその公共投資は、1998年の26兆円から下降し、2010年には、13兆円とほぼ半減している。
公共投資か半減しているのに、歳出が思うように削減できていない。それが財政の本質的問題、構造的問題を暗示している。

建設業は、為替の変動や石油の高騰と言った外部要因より、財政状況や地価の高騰と言った内部要因の影響の方が強い。
財政状態や地価の高騰と言った国内の経済状態は利益率に反映される。しかし、それが総資本回転率になると幾分和らげられているように見える。

景気の変動の影響を受けやすい産業


電力の消費量は、景気のバロメーターだとみなされている。
この様に景気の動きに先行して現れる指標、景気と同時に現れる指標、景気の動向を裏付けする指標があるとされている。

生産用機械は、景気の変動の影響を最も受けやすい産業と言える。
生産用機械は、マザーマシンと言われ、市場の拡大期には、業容が向上し、市場が縮小を始めると最初に手控えられることが多いため、業績が景気に先行して現れるため、景気のバロメーターのような働きをする事から先行指数とされることもある。
この事は、生産用機械が景気に敏感に反応する事を意味している。







       

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