経済の現状

日本経済の現状について

建設業


国家経済の礎



国家百年の計という。
近代国家経済の根本は、都市計画にあると言える。
国家とは何か、憲法や法が理念によって国家の枠組みを設定するのに対して物質的に国家を造り出すのが建設土木業である。
その原点は、都市計画にある。
都市計画とは、国家の在り方を具現化する事である。
国家の設計図、青写真が憲法であり、建国の理念である。
故に、都市計画は、国家理念を基礎としなければできない。

建設業には、四つの役割がある。第一に、国家を物質的に建設する事である。
第二に、長期資金の働きを具現化する。
第三に、資金を市場に供給する。
第四に、雇用を創出する事である。

建設土木業は、ダムを造り、堤防を築き、港湾を整備し、護岸工事をする。また、全国に道路を巡らし、鉄道を作り、また、運河を掘り、空港を建設し、電線を張り巡らすなどをして国家の基盤を作る。それを担っているのが建設業である。
また、国家から委託を受けて国土の保全、国土開発をするのも建設業である。
人々に住宅を提供し、工場やビルを作るのも建設業であり。

この様に建設業は投資に関わっている。投資は、長期資金を生み出している。
国や民間、双方の長期資金を生み出すのも建設業である。

建設業の生業(なりわい)は、社会資本の構築にある。社会資本とは、社会インフラストラクチャーである。
社会資本とは、国家の礎である。つまり、物質的な国家の基盤を構築するのが建設業である。

建設業の基本は投資にある。建設業は、公共投資、住宅投資、即ち、財政、家計両面の投資を担っている。
即ち、建設業の根本は、長期資金の働きにある。長期資金の働きは、経済成長の原動力である。
投資によって、建設業は、経済成長を引っ張ってきたのである。

実体的な面で国家の骨格を構築するのが建設業である。故に、建設土木業は、最も直接的な形で国家の未来像を描き出すことができる産業である。
それ故に、公共事業は、国家事業を最も実体的に描く事になる。
住宅投資は、民間投資の根幹をなしている。そして、投資は、長期的資金の働きを根幹を形成する。つまり、建設業は、長期資金を財政、家計両面から引っ張ってきたのである。

もう一つ建設業の重大な役割は、資金の実際的供給源だという事である。
建設業は、財政に直結している。建設業は、公共事業が重要な役割を果たしている。その為に、景気対策の有効な手段となっている。
建設業は、資金の供給源でもある。
これまで、不況時に景気対策として公共投資は、大きく貢献してきた。反面、財政赤字の元凶とも目されている。
その理由は、第一に、建設業の多くが巨額の資金を必要とする大事業だという事である。
第二に、建設業や市場や産業の基盤事業だという事である。また、国土保全、国土開発を実践する産業であり、不可欠な産業だという事である。
第三に、建設業が労働集約型産業だからである。つまり、雇用を創出するという面からも最も速効性のある事業だとえる。
第四に、建設業は、裾野の広い産業だという事である。
第五に、建設業の事業は広い地域に及んでいるのである。日本全国に建設事業はある。建設業は地域社会の中核、要の位置や役割を担っている。
第六に、一つひとつの事業が開始から完工までに非常に長い期間掛かる。

以上の事を鑑みると、市場に資金を供給する際、資金を集中的に投下し、なおかつ、早く効果を上げさせるのに都合がいい産業なのである。
その為に財政目的を実現する直接的手段として建設業は活用されてきた経緯がある。

建設業は、公共事業と深い関係にある。その為に、財政と直結している上、政治とのかかわりも深くなり、不正の温床にもなっている。
建設業は昔から、利権の塊でもある。

金融機関が、資金の面から経済変動をリードしてきたのに対して建設業は、実体的経済の成長を先導してきた。
それだけに、バブルの影響を最も受けた産業である。

バブルの問題点は、過剰設備、過剰債務、過剰人員だと言われている。
過剰設備、過剰債務は、資産と負債、債権と債務が過剰である事を意味し、過剰人員は、余剰所得を指している。
過剰債務を発生させた原因の一つが地価の上昇である。
過剰投資、過剰債務、余剰人員に建設業は深く関わっている事にも原因がある。バブルの影響は永く建設業に影を落とす事になる。

建設業の根本なければならなのは理想と使命感である。
金儲けでも景気対策でもない。この国をどの様な国にするのか、どんな国を建設するのか、それは建国の理念、理想を具現化する事である。
建設土木業は、本来夢のある、夢を実現する産業なのである。
そして、その為に経済に貢献する事が建設業本来の使命である。

公共投資は、資金供給の入り口



「お金」をどこに、どの様に流すかが問題なのである。
「お金」は、公共投資、給付金、行政経費というか形で市場に供給される。

「お金」が公共機関から市場に供給される実質的な入口が建設業界と言っていい。
そして、建設業界は、家計の最大の投資である住宅投資をも担っている。
つまり、公共投資、民間投資の要に建設業界はある。
建設業界は、好不況を占う試金石にもなる。

供給された「お金」は、最終的には個人所得に還元される。言い換えるとすべての経費は最終的には、個人所得に還元される。

個人所得は、消費と投資と貯蓄、公共費用のいずれかの形で支出される。
貯蓄に回されたものは、金融機関の負債となる。

国民の国民経済においては、投資は、総支出を構成する三つの要素の一つである。総支出を構成するの後の二つは、消費と貯蓄である。

そして、投資は、公共投資、住宅投資、設備投資からなる。
建設業は、そのうちの二つ、公共投資、民間投資の中核をなしている。

公共投資と住宅投資は、全ての投資の根源にあると言っていい。
つまり、建設業界こそ投資を担っているのである。

 



なぜ、建設業なのか


公共事業は、政府が資金を供給するための手段として使われる。
なぜ、資金を市場に供給するために、建設業界は有効なのかを考える事は、財政や貨幣制度を考えていくうえで重要なヒントを与えてくれる。

建設業が公共投資向きだというのは、公共投資の性格、役割、目的からくる。
なぜ、公共投資を行うのか。公共投資の目的の一番は、社会資本、インフラストラクチャーの構築にある。第二に、市場に資金を供給する事である。第三に、景気対策である。第四に、雇用の創出、失業対策である。
まず第一の社会資本、インフラストラクチャーの構築は、建設業そのものの目的にも合致している。つまり、国家理念を具現化する役割を担っているのが建設業なのである。第二の、資金の市場への供給源は、行政が国債を発行し、それを金融機関が換金化する事で、貨幣の発行はできるが実際にそれを市場に供給する手段は、投資である。投資なのかでも建設業は、直接的に資金を事業に投入する事が可能である。
第三に、景気対策である。景気が停滞した時に巨額の資金を集中的に投入し、また、ある程度の計算がたつのは、建設事業である。また、労働集約的建設業は、所得を直接的に増やし、なおかつ失業対策にも効果的である。故に、建設業は、公共事業のための手段として有効なのである。

建設業界が公共投資に向いているのは、第一に労働集約的産業だと言う点。第二に、インフラストラクチャーに係る産業で、他の産業の基盤となる事業だと言う点、つまり、他の産業に波及していく仕事だと言う点。第三に、公共性が高く、国民の合意がとりやすい事業だと言う点。第四に、巨額の資金を必要としていると言う点。第五に、民間が主体となってやっても採算が見込めない事業だと言う点。第六に、産業のすそ野が広いと言う点。第七に、完成させるまでに長い期間を必要とする事業が多く、継続性があると言う点。第八、事業規模が全国的であり、範囲が全ての地域に及んでいると言う点。過疎地や地方にも仕事がある。第九に、設備投資をあまり必要としていないと言う点などである。第十に、移動型産業だという事である。
建設業界と同じような産業に軍事産業がある。
故に、財政に占める公共事業と国防の予算は大きくなる傾向がある。

ただ、建設事業の難点は、一つひとつの事業が独立しており、長期間かかるとはいえ、継続性に乏しいという事である。しかも、一つの事業が巨額になるために、一定規模の事業者がなければならない。その為に、事業者間の競争が熾烈になり、仕事にあぶれたものは淘汰されていくことになる。

それが政治利権や談合などの不正の温床になり易いのである。

また、労働集約的であり、仕事場がダムや護岸工事など危険な場所や山間部などの人里から離れた場所である場合が多く、そのために、労働条件の悪化を招きやすい。建設業は、三Kの代表的職種とされてきたのである。
また、一つひとつの事業が独立していて継続性が乏しいために、常雇いの労働者は少なく、日雇い労働者の比率が大きくなる。


投資を担っているのが建設業界である



建設業の本質は、投資である。投資とは長期資金の働きの根源となる。故に、建設業は、長期資金の働きを左右している。
しかも、建設に対する投資は、公共投資に限らず、民間投資の要である。民間投資の大勢を占めているのが住宅投資だからである。
その意味で建設業は、公共投資、民間投資両面から長期資金の働きの基礎を構築している事となる。

建設業界にとって公共投資と住宅投資は、表裏をなしている。

建設業界の働きを理解するためには、投資が経済に果たす役割とは何かを明らかにする必要がある。

市場取引は、売り買い、貸し借りの二つからなる。売りと買い、貸しと借りは、立場によって変わる行為であり、基本的に同じ行為である。
故に、市場取引を構成する行為は二つしかない。

そして、投資にかかわる取引の基礎は、貸し借りにある。なぜならば投資は、資産、ストックを形成する取引であり、資産、ストックは長期的資金の働きによるからである。

貸し借りは長期的資金を形成する。
貸し借りによって資金は市場に供給され、売り買いによって資金は、市場に流通する。

建設業界には、公共投資の中核という側面と民間投資の中核という側面の二面がある。

「お金」の大部分は、公共投資を投資て市場に供給される。
社会給付は、所得再分配を意味し、新たな付加価値を生み出す再投資という働きはない。
また、行政経費は、直接個人所得に廻される「お金」で、投資という働きはない。
投資として長期的、また、生産的「お金」の働きを発揮するのは、公共投資である。

公共投資は、社会資本投資、国防投資、教育投資、研究開発投資、医療衛生投資等がある。また、国防投資は、治安、防災、軍事がある。

公共投資は、民間投資に転嫁されることで、市場の長期的資金の働きを形成する。
長期的資金は、物的生産手段を構築する。

この様な公共投資、民間投資の双方の入り口に位置するのが建設業である。

投資と一口に言っても公共投資と民間投資とでは、投資の目的も働きも違う。
第一の違いは、民間投資は、金融機関から資金を調達する事によって成り立っているのに対して、公共投資は、公共機関から資金を調達する事になり、公共機関は、国民の税金や公共機関の借金を財源としているという事である。

公共投資は、公共機関を財源としている性格上、現金主義であり、現金を市場に直接大量かつ集中的に供給する事を目的としている。
経済政策で問題となるのは、公共事業によって資金を大量に供給できたとしても、市場にその資金を流通させるかである。市場に資金が流通しなければ、それは一過性の事に終わってしまうからである。

景気対策として最も活用されるのが建設業界であり、それだけに、政治や利権とのかかわりが常に指摘される業界である。
しかし、古来景気を引っ張ってきたのも事実である。ただ、利権という側面ばかりで建設業界を評価すべきではない。

景気が低迷してくると公共事業を行う事によって潜在的総需要を刺激して景気回復を画策する。



建設業は、地方経済の中核を形成している。


公共投資は、時間的再配分だけでなく、空間的再配分の効果的手段の一つである。

特に、さしたる産業のない地域にとって公共投資は、地域経済を支える主柱ともなる。
地域経済の中枢が建設業によって牛耳られている場合も少なくない。

財政にとって空間的再配分は特別な意味を持っている。
そして、それは、地域経済の経済構造、政治構造、権力構造の基礎にもなっているのである。
多くの場合、政治勢力と建設土木業は表裏の関係になっている。

限られた公共事業を奪い合っていることから、地域社会のみならず中央においても政治権力のヒエラルヒーの基となっている場合が少なくない。
建設業界を取り仕切る者は、政治、地域社会、経済界の首領である場合も多くある。
公共事業の受注を巡っては血生臭い、暴力的抗争が行われた事もたびたびあった。

外国人の強制労働や日雇い労務者、出稼ぎ労働者の処遇問題などで度々トラブルが生じている。
ただ建設業が空間的再配分を担っているのは紛れもない事実である。

建設業、特に、土木は、公共事業によって所得の再分配を担い。建設業界は、地方の雇用を生み出し、大都市と地方との所得の格差の是正をする働きをしている。

また、景気浮揚策としての公共投資によって供給された資金を地方に還流する役割も果たしている。
それは、建設業が労働集約型産業である事も関係している。

ただし、建設業は、受注産業である事を忘れてはならない。
建設業が継続するためには、常時、持続的に開発がされていることが前提となる。
投じられる資金が巨額なだけに開発が途絶えると甚大な被害を受けるのも土木業の宿命でもある。

それは時として、既得権益や利権に結び付く危険性がある事を暗示している。
現実に、地方政治と建設業界は、切っても切れない関係にある。
それが談合などの体質を生み、いわゆる、国政の暗部を形成する事にもなる。

建設や土木というのは、本来、100年、200年という超長期の事業を前提として成り立っているのである。

建設業の構造



建設業界は、土木工事業と建築工事業に二分類される。
土木工事業は、公共事業を主とし、建設工事業は、住宅やビル建設などを主としている。

一般に公共事業というと建設業が思い浮かぶくらい国家との関係は濃い。

建設業が市場経済において鍵となる役割を果たしているのは、公共事業を通じて市場に対する資金供給の窓口、入り口になっているという事である。又、土木業界は収益の多くの部分を公共事業に依存している。
この様に、建設業、中でも土木工事業は、政府と持ちつ持たれつの関係にあり、極めて政治色の強い業界と言われている。
又、建設工事業は、民間投資の中核をなす事業だと言える。

また、土木、建設業は、高度な先端技術を担う部分と単純な肉体労働を担う部分、中央を担う部分と地方を担う部分、大企業と零細企業とで階層を形成している。

また、港湾、道路、トンネル、鉄道、ダム、治水等それぞれの担う部分によって専門性を要求される産業でもある。

土木建築業界の頂点たっているのがゼネコンと呼ばれる大手総合建設業者である。

 

資本金一千万未満の企業は、全規模からみて役員報酬の比率が大きく、福利厚生費の分配も少ない。また、景気の変動を受けてすぐに赤字化する。

 



資本金が一億円から十億円未満の企業の数は、十億円以上の企業数は5,6倍なのに対して従業員数は、むしろ資本金十億円以上の企業の方が上回っている。それだけ、企業の規模に差があると言える。

 

建設業界の歴史


建設業の歴史は長いし、建設業は、最初から政治と深く関わりがあった。
中国の古代、夏朝の皇帝、禹は、治水によって国を治めたとされる。

ピラミッドや万里の長城、大運河の建設など、古来から景気対策として活用されたのは、大規模な土木工事、建設だといわれる。
むろん、治水工事のような役に立つ事も多くあるが、古代の遺跡などを探索すると、実際は、何の目的でなされたのか、謎に包まれた土木工事も数多くある。

フリーメイソンなどの言葉があるように、土木工事、建築というのは、高度な技術を要し、また、組織を十分に活用する事が求められた。
それは今日でも同じで、科学技術の発達の基礎となる産業である事は間違いない。
又、都市計画は、都市国家の礎でもある。

建設業の特徴



建設業は、第一に受注型産業、第二に、内需型の産業、第三に、労働集約型の産業である。第四に移動型産業、第五に規制産業だという事である。

建設業界は、資源を他国から輸入して加工するとか、国内で生産した商品を輸出するという事で成り立っているのではなく、国内の受注に基づく自国内で完結する産業である。故に、海外の影響や為替の影響が比較的少ない産業の一つである。
そのために、オイルショックの影響をあまり受けていない。
逆にバブルの影響を大きく受けている。

建設業の中でも公共事業に依存した土木業界は、大手ゼネコンの下に何層にもわたって数多くの零細な下請け業者によって形成されている。

また、道路、港湾、ダム、鉄道、トンネル、高層ビル、橋梁など各々特殊な技術や経験を必要とし、部門が明確に分かれている。
高度な先端技術を必要とする専門技術者集団と単純な肉体労働者が混在する業界である。それが数々のトラブルの原因を引き起こす事にもなる。専門技術者は数々の資格によって守られている。逆に資格や規制がなければ成り立たない産業でもある。

政治、利権、そして、暴力団これらが入り乱れていた産業である。ダーティーなイメージが付きまとっている産業でもある。

石油業界は、量から質の転換が難しい産業であるのに対して、建設業界は、量から質への転換がもっとも計りやすい産業の一つである。

建設業界は、労働集約型産業の典型である。そして、高い専門性を要求される部分と単純な肉体労働を基礎とした部分が混在している上に、階層的な構造を基礎としている。
この様な産業で一番問題となるのは、労務問題である。

労務問題は、第一に、労働環境や労働条件の違い。第二に、人材育成、第三に、雇用の確保と保証、第四に、技術の伝承と向上などであるが、建設業界は、いずれも深刻な問題を抱えている。

建設業界は、最先端を行く部分と伝統的な部分とが混在している。
建設業界は、職人の世界でもある。職人は、個人事業者である場合が多く。劣悪な労働条件、低賃金、収益の不安定さ、社会保障の不備などが若年層の確保を難しくしている。
若手の人材確保もままならない状態である。

建設業界は、景気の変動の影響を受けやすく、人手不足と過剰とを繰り返し、その都度、賃金高騰と低下が起こる。収入が不安定である。それでなくとも3K、即ち、「きつい、汚い、危険」産業の典型と言われている。

建設業界では、技術の伝承は不可欠であり。若手の職人の不足は、産業の基礎を揺るがす大事である。

建設業界の現状



建設業の市場規模は、90年代には、GDPの1割を占めていた巨大産業である。
GDPに占める割合だけでなく、投資という観点からしても建設業が日本の経済に占める役割は大きい。
建設業は、公共投資、住宅投資の担い手でもあるのである。
現在財政を深刻化しているのは、雇用を創出する為には、公共投資をする必要があるというのに、歳入が不足している事である。その影響を建設業界は、まともに受けているのである。歳出に占める税収の割合は、リーマンショックの翌年2009年には、38%にまで落ち込んでしまった。



名目GDPに占める産業別割合の推移
1970 1975 1980 1985 1990 1995 2000 2005 2006
農林水産業 5.9% 5.3% 3.5% 3.1% 2.4% 1.8% 1.7% 1.5% 1.4%
鉱業 0.8% 0.5% 0.5% 0.3% 0.2% 0.2% 0.1% 0.1% 0.1%
製造業 34.8% 29.1% 27.1% 27.3% 25.9% 22.2% 21.3% 20.6% 20.7%
建設業 7.5% 9.3% 8.9% 7.5% 9.6% 7.9% 7.1% 6.1% 6.1%
電気・ガス・水道業 2.1% 1.9% 2.6% 3.1% 2.5% 2.6% 2.6% 2.3% 2.2%
卸売・小売業 13.9% 14.2% 14.7% 12.8% 12.9% 14.7% 13.5% 13.2% 13.1%
金融・保険業 4.1% 5.1% 4.8% 4.8% 5.5% 5.7% 5.8% 6.7% 6.7%
不動産業 7.8% 7.9% 9.0% 9.7% 10.3% 11.6% 11.1% 11.5% 11.5%
運輸・通信業 6.7% 6.2% 6.2% 6.5% 6.4% 6.8% 6.7% 6.4% 6.4%
サービス業 9.3% 10.5% 13.8% 16.1% 15.7% 17.1% 19.6% 20.6% 20.7%
その他 7.1% 10.0% 8.9% 8.9% 8.6% 9.4% 10.5% 10.9% 11.0%

就業人口から見ても、建設業の規模は、製造業、卸小売業、サービス業に次ぐ4番目の規模であり、雇用に与える影響は大きい。それでも兼背作業の就業人口は、2002年に比べて2009年は101万人減少した。(「図解雑学建設業界のしくみ」倉見康一、倉見延睦著 ナツメ社)

建設業者は、平成24年の時点で資本金一億円未満の業者、即ち、中小企業が全体の98.8%を占めている。(「業種別会計実務 建設」 トーマツ 建設・不動産インダストリーグループ著 中央経済社)

建設投資が、2013年には、49、5兆円と建設業界は、ほぼGDPの1割を占める産業である。(一般財団法人 建設経済研究所)

建設投資は、1992年に84兆円を記録した後、徐々に下降し、2010年には、42兆円まで減少した。

受注産業であるから利益率は低い。
設備投資が殆どかからないから総資産に占める固定資産の比率は低い。
仕事の現場は、主として屋外である。
そして、許認可事業である。

財政の悪化によって公共事業は、半減している。

公共事業が半減し、また、民間投資の減退によって土木、建設、いずれも苦戦をしている。

公共投資が半減した上に、建設業界は、規制緩和によって過当競争が激化し、収益力が低下し、更に経営環境を厳しいものにしている。

規制緩和による競争の奨励、収益力の低下、経費の削減、緊縮政策、自己資本率の向上、総資産、総負債の圧縮等の施策は、縮小均衡型の施策である。

建設業と会計


建設業は独自の会計の処理法を持っている。
それは建設業の性格による。

まず第一に、建設業会計は、小売業などの一般会計と違い、製造業会計に属するという点である。一般会計と製造業会計の違いは、原価計算が製造業はあるという事である。
更に建設業会計は、製造業会計とも一線をかしている。原価計算には、仕掛品勘定がある。製造業にも仕掛品勘定があるが、科目は、仕掛品ではなく。未成工事支出金勘定となる。
建設業界では、建設工事が長期にわたる事があり、建設工事にかかって支出をどの時点でどのように計上するかが、収益や利益に重大な影響を与える。一般の製造業のように完成するまで費用計上しない処理と工事の進捗状況に合われて計上する二つの処理の仕方が認められている。この点を念頭に置いておかないと建設業の収益構造は、理解する事が難しい。

一番重要なのは、収益と費用、収入と支出の認識、そして、期間の問題である。つまり、現金決済と損益の認識に時間的なズレがあり、それをどのように処理するかによって利益の計上の仕方が大きく違ってくるのである。


建設業界の収益構造





法人企業統計 財務省




損益上に現れない資金の流れ


建設業で鍵を握っている要素は時間である。
時間が関わっているために、目に見えない資金の動きが建設業の底辺に流れている。

第一に、建設業は、受注してから納品するまでに長い時間がかかると言う点である。第二に、建設業は、長期資金の働き、つまり、投資に係る産業だという事である。

建設業

企業法人統計

  
法人企業統計

支払利息は、バブル崩壊によって急速に下落している。

  


建設業の費用構造





建設業は、人件費が粗付加価値の7割以上を占める労働集約型産業である。



人件費を売上高で割った人件費率も、人件費を純付加価値で割った人件費付加価値率も全業種を上回ている。

 

有形固定資産(建設仮勘定を除く)(期首・期末平均)を従業員数で割った労働装備率も全業種、製造業と比較してもかなり低い。
この点も労働集約型産業である事を示している。




建設業の利益構造



リーマンショックの痕跡も見て取れる。

 

 

建設業の貸借構造


バブル崩壊後自己資本率は、急速に高まっている。

 


社内留保








建設業のキャッシュフロー








建設業の営業キャッシュフロー


営業キャッシュフローは「-」しているわけではない。むしろバブル崩壊直後は「-」まで下げているがその後急速に持ち直し、93年以降は、一段と高い水準を保っていると言える。



建設業の投資キャッシュフロー


投資キャッシュフローは、プラザ合意後バブルの形成とともに膨らんでいき、バブルの崩壊に伴って急速に萎んでいるのがわかる。




建設業の財務キャッシュフロー


財務キャッシュフローは、バブル崩壊後、一気に「-」まで減少している。
これもわかりやすい動きである。



法人企業統計 財務省 10億円





投資と資金需要




長期借入金を減価償却費と純利益の和で割った値、つまり、長期借入金の返済年数の目安は、98年頃から急伸し、2003年に一定の収まりを見せている。





建設業界のフリーキャッシュフロー


 


住宅投資と建設


住宅投資は、98年から2009年まで下がり続けている。

 
国土交通省   単位 1兆円 12年~14年は見通し


財政に果たす建設業の働き


公共事業は不況期の景気対策によく活用されてきた。
その公共事業も、2000年をピークに減少している。


国土交通省   単位 1兆円


バブルと建設業


売上高が92年ピークを迎えてからしばらくは横ばい状態だったのに対して、営業利益は、91年にピークを迎えると93年には、急速に下落している。

 




バブル期の財務キャッシュフローの波をそのまま、バブル崩壊後の営業キャッシュフローが補っている形になっている。
財務キャッシュフローはそのまま下降し、マイナスの値を96年に取り、97年に一旦はプラスに転ずるも99年以降マイナスのままである。



バブル崩壊後営業キャッシュフローが好転したのは、公共投資の影響がある。


キャッシュフローは、企業法人統計 財務省
公共投資は、国交省の資料を基としている。
  



 


バブル崩壊後93年頃からフリーキャッシュフローが潤沢になるのは、営業キャッシュフローの貢献というよりも在庫投資の減少によるところが大きい。

 






一人当たりの付加価値は、バブル期に急伸した後、92年を一つの頂点とし緩やかに下降している。



固定資産と固定負債の関係は、鰐が口を開いたように一時期拡大し、拡大したまま、横ばい状態なのに対して、長期借入金と土地の残高の関係は、2000年以降急速に圧縮された。

 

住宅投資が家計に与える影響


住宅投資は、家計における最大の投資だと言っていい。



まず第一に言えるのは、賃貸と持ち家、どちらを選好するかである。賃貸と持ち家の選択肢を変化させる基準点はどこにあるかである。
バブルの時、投機的資金によって実需を上回る価格が形成された。


総務省統計局 家計調査   1世帯当たり1か月間の収入と支出


バブル景気、リーマンショック、いずれも地価が絡んで起こった現象である。
土地は投機の対象として活用されてきた。土地の動向によって景気も左右され続けてきたのである。

また、生活水準の基本も住環境である。
日本は、戦後の焼け跡からスタートをした。それこそ下町から富士が見えると言われた時代である。それから高度成長時代を経てバブル、そして、バブルが崩壊し今日に至っている。
1955年当時は、持ち家の比率が80%近くあったのが、今や30%近くまで落ち込んでいる。
その分、貸家や分譲住宅が増えているが、貸家と言ってもかつての長屋や安アパートとは様変わりをしている。

 
国土交通省 9-10 利用関係別着工新設住宅の戸数及び床面積


国土交通省「建築着工統計」


住宅価格のデータは、(株)不動産経済研究所「全国マンション市場動向」による全国の新規販売民間分譲マンション価格年収は、2000年までは総務省「貯蓄動向調査」による年平均の全国の勤労者世帯年収、2001年は、総務省
「家計調査報告(貯蓄・負債編)」による2002年1~3月平均の勤労者世帯年収、2002年以降は年平均の勤労者世帯年収不動産経済研究所「全国マンション市場動向」、総務省「家計調査」、同「貯蓄動向調査」より国土交通省作成

バブル崩壊後も上昇していた住宅ローン残高も2000年を境に横ばい状態に陥っている。
2000年に何があったかが問題なのである。1999年2月、日本銀行は短期金利の指標である無担保コール翌日物金利を史上最低の0.15%に誘導することを決定した。
2000年には、ゼロ金利解除を試みるがITバブルの崩壊もあって2001年には、再びゼロ金利政策に戻らざるを得なくなった。



地価の評価方法の代表的なものには、「収益還元法」「取引事例比較法」「原価法」の三つがある。

また、今の日本の地価は、一物五価と呼ばれる状態にある。第一に、実際の取引価格である実勢価格(時価)、第二に、国土交通省が作成する公示地価、第三に、都道府県が公表する基準地価、第四に、国税庁が定める路線価、第五に市町村が定める固定資産税評価額である。それに、競売等に使われる売却基準価格(不動産鑑定評価額)を加えると一物六価になってしまう。




       

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