2003年8月14日、アメリカ時間の午後4時過ぎに、アメリカ北西部からカナダにかけた東部一帯に大規模な停電が発生した。停電は、29時間にも及び、停電が夕方の帰宅時間に重なったため、通勤通学が大混乱を起こしたり、また、エレベーターや地下鉄に人が閉じこめられるなど、市民生活に多大な影響を及ぼした。停電の範囲には、ニューヨークなどの大都市も含まれた広範囲に及ぶ規模であった。この大停電における被害総額は、60億ドル、日本円で約6000億円と見積もられている。原因は、システム障害だと見られ、その背後には、電力自由化の影響が一因だと考えられる。
 ニューヨークでは、1997年にも大停電があったが、この時は、治安の乱れが問題となった。
 また、東京でも2003年に大停電があり、このときは、鉄道や携帯電話が一時不通になったり、信号が止まり、警察官が交叉点で交通整理をしたり、また、金融機関の端末が動かなくなったりして終日混乱が続いた。1987年にも日本の首都圏で大停電があり、その時の被害額は、1兆8千億円にも及んだと言われている。

 この様に、電力ネットワークは、我々の日常生活に直結しており、切っても切れない関係にある。それがライフラインと言われる由縁である。

 オイルショックというのは、古くて新しいことがらである。オイルショックという言葉が使われたのは、第4次中東戦争の時に始まる。しかし、その後も、石油危機が起こるたびに、囁かれる。石油の動向は、国家の存亡の問題と密接に結びついているからである。

 近代は、エネルギー革命によって始まったとも言える。二十世紀は、エネルギーを巡る争いの時代だった。そして、エネルギー産業は、世界的な規模でネットワークを張り巡らしたのである。国際紛争の火種は、エネルギー問題が常に抱えていると言っても過言ではない。

 直接的なエネルギー源には、電気、ガス、水道、石油の四つがある。過去においては、石炭や薪がエネルギーの主役だった時代もある。また、エネルギーには、火力、電力、水力(蒸気も含む)、原子力、風力、重力、熱力、磁力などがある。そして、それぞれに特性がある。

 電気、ガス、水道、石油は、ライフラインと言われ、現代生活に欠くことのできない重要物資でもある。また、それに関わる資産、設備は、社会資本とも言われている。いずれにしても、鉄道、道路、運河、港湾、空港と言った交通ネットワークと共に、大規模な初期投資、設備投資が必要とされる。その為に、巨額の資金を必要とし、多くが国家的事業として見なされている。

 また、空気や食料もある種のエネルギー源として見なすこともできる。特に、空気は、ただで手に入る上、ありふれている資源であるが故に、主要なエネルギー源と見なされていないが、本来、空気は、水と同じくらい重要な資源なのである。つまり、空気は、市場価値がないが故に、経済的価値が低いだけで、エネルギーという面から見ると最も重要な資源なのである。ここにも、経済の意味が隠されている。

 エネルギーネットワークには、過程があり、どの段階、どこでエネルギー化するかが重要になる。
 つまり、エネルギー産業には、それぞれ、上流部分と下流部分を持っており、上流部分と下流部分では、産業、構造も形態も違うのである。

 そのうえ、エネルギーは、輸送、生産、消費のあらゆる局面において環境問題を引き起こしている。ある意味で取り扱いが厄介な産業なのである。

 日本の石油産業は、消費地精製主義を基本的に採っている。消費地精製主義というのは、原油、原材料を、原油のままで輸入し、それを消費地で精製して販売する形式である。原油で輸入することで生産拠点を国内に置くことで一貫生産ができ、産油国、精製国双方の変動の影響を受けずにすむ反面、生成過程から派生する特率に拘束される欠点がある。精販ギャップがそこから生じるのである。
 石油産業は、連産品としての特徴もある。連産品であるが故に、原価計算が難しく、どの消費者に負担が大きいかは、政策的なものとなりやすい。そして、それが石油メーカー、元売りの収益構造に重要な影響を与えている。

 ガスは、常温では、気体であり、水と石油は、液体である。また、電力は電気である。そして、これらの物理的特性が、産業の在り方、形態をも規制している。もっとも、備蓄に適しているのは、液体である。水と石油である。薪や石炭は固体であり、備蓄は可能だが、備蓄する場所の問題がある。ガスは気体であり、常温で備蓄するためには、それだけのスペースが必要となり、圧力をかけたり、温度を下げて備蓄するために、それなりの装置が必要となる。また、電気は、現代の技術では、備蓄ができない。
 ガスや石油、水の運搬は、交通機関か、パイプラインを使って行われる。それに対して、電気は、電線によって行われる。

 また、エネルギーは、環境に与える影響も大きく。温暖化問題の主たる要因とされる。薪炭を原材料としていた時代は、森林資源や砂漠化と言った環境問題の原因とされ。化石燃料を原材料とする今日は、大気汚染や温暖化問題の主因とされている。また、国際情勢の影響を受けやすく、いざという時のための備蓄も重要な課題である。その為に、省エネ化やクリーン化、分散化が緊急の課題とされている。

 気体の形で備蓄すべきか、液体の形がいいか、個体が適切かが重要となる。また、どこでエネルギー化するかで在庫場所も、在庫形態も、在庫の仕方も違ってくるのである。

 また、エネルギー製作の在り方は、消費側の在り方をも規定してしまう性格がある。例えば、電気製品なのか、ガス器具なのか、石油製品なのかによって消費側の在り方、様式も変わる。また、同じ電気製品でも二百ボルトか、百ボルトか、ガスでも、天然ガスか、精製ガスかによって安全装置や使用方法が違ってくる。毒性の有無も違うのである。それによって生活様式まで違ってくる。
 また、輸送形態もコストや産業の形態を左右するほどの影響がある。その為に、会計の処理の仕方や為替の動向の影響も受けやすい。

 第二次世界大戦の折り、日米開戦のキッカケの要因になったのが、日本に対する石油の封鎖と石油の備蓄量であったことは有名である。また、石炭から石油に軍艦の燃料が変化したの戦争の在り方、主戦場を重大な影響を与えたのも衆知の事実である。

 エネルギー産業は、基本的に装置産業であり、巨額の資金を必要とする。商品の特性としては、商品格差が少なく、差別化しにくい製品である。その上、地域に拘束された産業であり、また基幹、産業、地域の産業や生活の生命線ともなるので、地域独占的な市場を形成しやすい。また、市場経済に適しない社会資本の一つとして国営化、公営化されやすい。
 オイルショックの例を見れば明らかなように、エネルギーは、重要な戦略物資の一つでもある。エネルギーの供給や価格は、世界、国際情勢に甚大な影響を及ばし、湾岸戦争の例を見ても解るように、度々、戦争の直接的な原因となる。

 エネルギー源の確保は、国家の存亡を握る大事であり、エネルギー資源の確保が国家戦略の枢要であると言われる由縁である。


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