経済の現状

事業は家を建てるような事


事業計画にせよ、予算にせよ、システムにせよ、組織再編にせよ、投資計画にせよ、家一軒、ビル一棟建てるのに相当するくらいの大仕事だという事を自覚してほしい。
現に、みずほ銀行のシステムの刷新は、当初甘く考えていたために、ほぼ十年、総額、四千億円、工数で三十五万人月、参加ベンダー千社という巨費と労力をつぎ込み、しかもその間、二度の大規模システム障害を起こすという事態を招いた。そして、トップも責任をとって交替と言う事態にもなっている。
組織とか、計画は、目に見えない建物を建てるような仕事なのだという事を強調しておきたい。だから、経営は事業なのである。
予算にせよ、投資計画にせよ、組織替えでも、最低で半年から一年、投資計画は、長いと三年以上かかる事業。しかも、多くの人間が関わる共同事業だという事。この点を忘れると最初から失敗する事になる。ボタンの掛け違いをするなと言われ続けた。
建物と同じだから、施主も、設計士も、施工もいる。事務方は、仲介業者(ゼネコン)のような者をイメージすればいい。
共同作業とは、一緒に作業する者に仕事の概要が浸透していなければならない。その為に、必要な作業がある。それを面倒くさがっていたり手抜きをすると後々厄介な事になる。
冒頭の作業、合意作りは入念にする必要がある。最初は形作り、形から入る。
事務方は、先ず、事業開始にあたり、よく施主の話を聞いて、土台から建て替える事になるのか、リフォームするのか、修理、修繕程度で済むのか、模様替え程度で終わるかの目安あたりを付け、作業計画を立てる。作業計画が立てば、次に、組織づくりにかかる。
間に立つ者、事務方は、根気強く、粘り強く聞いて後々後悔しないように手配する。
その上で、システムでいえば、施主から要望を聞いて要望定義、要望書を作成し、ベンダーを募集する。ベンダーは要件定義をして概算書、見積書を作成する。ベンダーが決まり要件定義書が承認されたら、実際の作業仕様を作成する。予算書であれば、方針書、計画書、企画書を総括責任者の意見を聞いて総務が、作成し。それに基づいて組織を設定する。
新築にするか、リフォームか、建て替えか、模様替えかによって計画の規模も期間も組織も全く違ったものになる。新築と言っても建売だってある。
施主、責任者の話を聞いてまず、その辺のあたりを付ける。
また、リフォームするにしても土台から建て直すのか、枠組みだけを残すのか、部分的な改築にするのか、模様替え程度に済ませるのかの目安を決めないで作業に入ると取り返しのつかないミスを犯す事になる。この辺が、受注者の見立てが重要になる。
場合によっては、古い家を壊しす必要が出てきたり、仮屋の手配もある。一時的に電気やエレベーター、ガスを止める事もある。引っ越しの準備も必要となる。諸々の付帯業務が発生する。一見どうでもいいような事で大きく計画が狂う事になる。
建物は、完了した直後から老朽化が始まり。計画は、完成した直後から狂いが生じる。システムは、稼働した瞬間から陳腐化する。だから、なんでも予実績管理、誤差の修正が始まる。その為に、予定、予算、計画を立てる。予定、予算、計画がなければ、方向の修正もできなくなる。間違いがあっても早い時期に修正できれば大事に至らないが。計画が予算がないと最初のボタンの掛け違いみたいなことが、失敗の原因となる。みずほのシステムが典型。
施主や統括の意見を聞いて、基本計画書を作成する為には、予め、質問項目を用意し、要点を決めてからかかる。そうしないと、とりとめがなくなって作業の糸口がつかめなくなる。
これは、ブライダルや旅行、レストランと言ったサービス業のように目に見えない作業を主とした産業が受注を受ける際の決まり事である。ここに形がある。この形を設計したものが必ずいたのだという事を忘れてはならない。実際の作業が始まってから、質問する事が出来ない事が多くあるので、この点の確認が重要となる。例えば、いつ飲み物を出すかと言った質問。これなんかは定番になっている。
一年、二年、三年に及ぶ工事の場合、最初は全くの空想、構想から始まる。詳細には本来及ばないが、総括や施主は、理想や構想が先走るため、細目にわたるイメージが先行する事がある。その場合は、責任者、施主の要望として聞き込み、実際の作業の中で消化するようにする。
詳細の意味を履き違えないように…。最初は、構想の詳細に関わる事は極力避ける。最初の段階の詳細とは、次にポイントまでの作業を指す。ここは、明確に具体的にしておく必要がある。最初の段階では構想そのものはゆとりを持たせ、ストーリーのようなものにしておくといい。最初から細部にこだわると遊びがなくなり、全体像がつかるなくなる。最初はどの程度の仕事になるかがおおよそ検討が出来ればいい。予算見積もりや作業見積もり、大枠が立てられればいいから。
長い期間には、責任者、施主の考えや気持ちが変わる事は、当然あるし、あまり頑なに最初から考えると身動きが出来なくなり、状況の変化に適応できなくなる。要望は、要望として聞きその時点では処理する。要望が現実味を持ってくるのは、作業の最終段階だと思った方がいい。詳細は最後まで確定しないし、やってみないと解らない事はやってみて変更する。気が変わるのは、当然。だから、施主や責任者の結論を待っていたらほとんど仕事は進まなくなる。確定したところ、できる処から着手するというのが原則。施主、責任者が結論を出さない事を理由とするのは、自分の怠慢の言い訳に過ぎない。
皆の錯覚は、これまで、システムも組織も模様替え程度で誤魔化してきた。しかし、その老朽化が極限にまで現在進んでいる。
今の人間は、模様替え、せいぜい言って部分的なリフォームで誤魔化してきた。その結果甘く考え、安直、小手先で処理する癖がついてしまった。
それがみずほ銀行ですらあの大惨事を引き起こしている。
基幹システムは、稼働期間が二十年をこえると非常に危険な状態に陥ると言われる。
経産省は、2025年になると21年以上稼働し続けている基幹システムが60%を超えるのではないかと危惧している。わが社も例外ではない事を忘れてはならない。
もう後がないのである。システムも、組織も、破綻したら、一気に壊れる。甘く考えないでほしい。今やらなければ、次はない覚悟で臨んでほしい。
もう一つ付け加えておくとみずほの最大の失敗は、CIO、つまり、システムの最高責任者を置いておかなかった事と言われる。
みずほは、第一勧業銀行、富士銀行、日本銀行が経営統合し、システムも一本化しなければならなかったのに、各行の面子や都合を優先し、総花的な体制を敷いた。
責任者を最初に明確にしなければ、仕事の統制はとれなくなる。



間違えるなよ。方針があって、施策があって、結論があるんだからな。
結論があって、施策があって、方針があるわけではないからな。
物事には、順序がある。
順序をわきまえない者は、道理がわからない。
常に、原点を確認し、目的に向かって進む。どちらも常に確認しないとすぐに道に迷うぞ。始まりもなく、終わりもない仕事はするな。

これは経験に基づく事だけど、親や師からわかっているよと言いたくなる事を指摘された時、よほど注意しなければならない。
解っているよと反発したくなるのだけど、胸に手を当てて考えるとできてない。
だから、嵌められたように嵌ってしまう。
いまだに、時々、思い出しては、はっとする。この歳になってもできてない事に気が付く。当たり前にできる事を注意されると頭に来るけど、できていないんだから仕方ないよね。
今、やろうと思っていたんだというコマーシャルがあったけど、あれ、あれ。
もう一つ、注意と言うのは、後付けが聞かないんだよね。予め注意をしていてそれで、失敗した時、聞くので、失敗してから注意しても聞かない。なぜ、注意してくれなかったんだって反発するだけ。
だから、どうしても小うるさくなる。相手が鬱陶しいのは、わかるけどね。


仕事を計画するのは、長い旅行をするのに似ている。
急がずに、一歩一歩確実に進んでいく必要がある。

間違えがあったら、間違ったところまで遡ってそこからやり直すようにする。
その為に、経歴、軌跡が確認できるように記録を付けてくる。段階を儲けてその時点時点で決済するのは、何か問題が起きても前段階の決定時点以前にまで影響が及ばないようにする。それと目安、目標にもなる。
だから、節目節目で公式に決定し、簡単に修正できないようにしておく。そうしないとドミノ倒しよろしく何かの拍子に一つの駒が倒れるとそれまでの仕事全てがお釈迦になる。
段階毎に要所要所を決定しておけば、たとえ失敗しても前の段階まで戻ればいい。故に、決定は手順に沿って決めていくのがベスト。

仕事は、一貫性が求められる。だから、方針を定めて一本筋を通す。その為には、全体を通した構想が重要となる。一つひとつの作業がバラバラにならないように前後、順序を間違わないように単位作業を組み立てていく。
作業の洗い出し、読み込みが鍵を握る。

大体、簡単な仕事でも三か月を基本に計算する。
計画に一か月、準備に一か月、実施と後始末に一ヵ月、計三か月を一つのセットと考える。節目、節目に、イベントを置いて、マイルストーン(目安、道標)、目標、結合(ジョイント、繋ぎ)、始点と終点、ストッパー役をさせる。

会議や儀式をどう設定し位置付けるかが、大枠づくりの一段階である。
イベントは、形である。形に意味を持たせる。象徴である。形でないと集団には伝わらない。表現できない。
言葉のような一次元的でなく、形によって多次元的な事を表現する。

結婚式と言うのは、形なのである。形に意味がある。入学式も、卒業式も、入団式、結団式、開会式、閉会式、出陣式、祈願も、冠婚葬祭は形である。日本人は、形を軽視するように仕向けられたから形が崩れ、失われつつあるのである。

大体、予算のような一年計画は、前後に四半期の準備期間と後処理機関を想定して一年半を基準とする。
システム開発や組織開発は、三年を基本とする。
桃栗三年、柿八年と言う。
ちょっとしたイベントでも一年から二年かかると思っていていい。

軌道に乗れば一ヵ月、二か月と言う周期でも運転できる。しかし、それは、ベースが出来ている事を前提としている。

一年は区切りは、一ヵ月単位、四半期単位、半年単位、年単位がある。単位期間を組み立てて大枠を築く。区切りは、一ヵ月単位なら、十二。二か月単位なら、六。三か月単位なら、四。四か月単位なら、三。半年単位なら、二。一年単位なら一。

会社は組織であり、一年二年と言う単位で協働して仕事をしていかなければならない。だから、自分が自分がどこに位置、どの様な役割を果たしているかを自覚する必要がある。その為に、確認と報告は忘れてはならない事なのである。特に出発点を明確にしておく事は、自分がどこにいるかを確かめるために不可欠なのである。




       

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