26、変化と一定



経済には、変動的な部分と一定な部分がある。
そして、経済事象では、変化か一定かが重要な意味や働きを持っている。

変化と一定なのは、経済状態意だけを表すのではない。
費用のような事にも変動的な費用と一定の費用がある。

変化と不変それが経済の実相である。
変化、或いは、一定、どちらか一方が絶対的だと考えるのは間違いである。
変化か一定かは相対的な事象である。
変化か一定かは認識の問題なのである。

変化か、一定かは、認識の仕方の問題であり、不変的な真理とか、絶対的な原理というのではない。
同じ事象でも視点や認識の仕方によって変化している事象とも一定な事象とする事も出来るのである。

変化する部分と一定な部分は相対的な事である。

例えば変動費、固定費を考えてみるといい。
変動する部分と固定する部分という見方も出来る。

変動費か固定費かは、全体的に見て変動的か、一定かによって決まる。
しかし、単位当たりの費用という観点で見ると変動は、一定となり、固定費は変動的となる。
この様に、変動費、固定費と言うが視点によって変動費や固定費も変動的だったり、固定的だったりする。
実際に変動的か、固定的かは、相対的なのである。

又、固定費、変動費の比率も産業毎、成長段階毎に違っている。
故に、変動費、固定費の働きを特定する事も出来ない。
変動費、固定費の働きは、産業毎、成長段階毎に違ってくるのである。

円安円高と言うが何を基準にして円安円高とするのか。
一定時点の円の上下運動を指して言うのが一般的であるが、それは、その時点における円の方向性を言うのである。
一定基準に対して円が安いか高いかと言う視点もある。
また、相対的基準に基づいて円が安いか低いかを決める事もある。
この様に円安か、円高かと言っても基準の取り方によって変わってくるのである。

現在の経済は、変化を基準にして考える。
つまり、成長を前提とした経済を標準化している。
しかし、経済には、一定で変動が少ない部分があり、その一定な部分が経済の基礎を構成しているのである。
故に、変化だけを捉えて経済を考えるととんでもない事になる。

変化が総てなのではなく、変化が少ない経済状態も、即ち、一定の経済状態も普通に存在するのである。

変化を前提として経済といっても、更に、成長、拡大が前提とされている。
しかし、成長も拡大も経済の一局面であり、常態ではない。
変化の中にも停滞や縮小と言った局面もある。
一つの変化の局面だけを捉えて敷衍化してしまうと経済の実相を見失ってしまう。

市場の全体は、幾つかの市場が重なり合って、或いは、複合されて出来ている。一つの市場だけで出来ているわけではない。
しかも、市場は一律的な力が働いているわけではない。
市場を構成する商品の特性によって市場の働きも性格も違ってくる。

また、全体的な市場の中には、拡大する市場と縮小市場が併存する場合もある。
拡大成長する市場だけが一般なのではない。
又、変化を基調とした市場だけが存在するわけではない。一定な状態も均衡した状態の市場も存在する。
これらの市場の果たしている役割を無視したり、軽く見ていると市場を安定させる事も景気を制御する事も出来なくなる。

市場は極めて構造的なのである。





       

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