陰陽五行


太極



中国の哲理は深淵にして玄妙である。
中国の偉大さは、中国の歴史によって育まれた。中国人が中国の伝統を顧みないのは、中国の不幸のみならず、人類の不幸である。

経済は、中庸にある。

現代の経済が乱れるのは、中庸が保たれないからである。
経済的価値には、人の必要性から生まれる価値、物の働きから生れる価値、お金と物との交換から生まれる価値の三つの要素がある。
この三つの要素の調和によって経済の中庸は保たれる。人が求める価値と物の働きの価値を貨幣価値が上回ると経済は成立しなくなる。
貨幣は、主たる価値を生み出せない。貨幣は従である。主たる価値は、人と物によって生み出される。
主たる存在を従たる貨幣が支配する事は、本末を転倒している。

 
(個人 生産 支出
労働 (制度単位 蓄積
所得 消費 (市場)

制度単位は、金融法人、非金融法人、一般政府、家計、対家計民間非営利団体、そして、海外部門を指して言う。
人は、物の生産に対して労働という生産手段を提供し、所得を得る。物は、労働によって生産され、市場を経由して消費される。金は、支出によって市場に供出、分配を仲介する。
所得は、人件費であり、生活費でもある。
消費と生産は、需要と供給の基となり、財の市場流通量を制約する。通貨の流量によって支出と分配は制御される。財の価格、物価は、財の需給と通貨の流量によって裁定される。

物は、労働によって生産され、金の支出によって配られる。
人は、所得を得て必要な物を市場から手に入れる。
金は、働きに応じて人に配られ、物の分配を仲介し、価値を蓄積する。

貨幣価値は、陰の力であり。陰の力が強くなって物や人の働き、陽の働きが抑え込まれてしまうと経済は陰によって支配される。

易は、吉凶悔吝を占う事であり、是非善悪を問う事ではない。
易は、判断を誤らないように、後悔をしないようにするために、進むべき方位を指し示しているのである。

爻象は内に動いて、吉凶は外に見(あら)われ、功業は変に見(あら)われ、聖人の情は辞に見(あら)わる。

陰陽と善悪、真偽、美醜の価値観は異なる。
陰か陽かは、善か悪か、真か偽か、美か醜かとは次元を異にする。
善の中にも陰も陽もあり、悪の中にも陰も陽もある。
争いや、乱れは、むしろ、陽にある。
平穏や安定は、陰にこそある。
陽だから、善。陰だから悪という訳ではない。

表に現れた陽ばかり見ていて、裏にある陰を見ないと世の中の真実を知ることはできない。
何を是とし、何を非とするかは、表裏、陰陽合わせて見ないと定まらない。
表ばかりを見てもその裏に隠されている事が察知できなければ物事の真実を見極めることはできない。

効き目があれば弊害もある。良いところもあれば、悪いところもある。長所もあれば、欠点もある。陽もあれば、陰もある。
政策も万能薬なんてない。規制緩和も競争も絶対的原理ではない。先ずどのような症状、状態かを確認する事である。
処方は、診断書に基づいてなされるべきであり、根拠もなく、状況や前提を確認せずに、何でもかんでも一律に対処しようとするのは、それは、一種の呪術であって科学的だとは言えない。
今の経済学者の中には、呪術師みたいな者が紛れ込んでいる。

世の中の動きには、陰陽がある。
世の中の陰陽を知らなければ、世界の動きを知ることはできない。

世の中は、陽の部分だけではない。
世の中の争いは、陰の働きによると考えるのは間違いである。むしろ、陰の働きによって争いが封じ込められている場合もある。

太極図は、探索木となる。
陰陽は、二進法である。
陰陽は、対称的である。
陰陽は、フラクタルである。
陰陽は、離散である。




易は、順列、組み合わせの問題だともいえる。
順列、組み合わせの問題だから、全体を俯瞰でき、また、個々の働きと全体の働きを同時にとらえる事ができる。
順列、組み合わせは、確立統計、集合論、群論の基礎ともなる。
故に、易は、数学であり、科学でもある。

易に太極あり、これより両儀を生ず。両儀は四象を生じ、四象は八卦を生ず。
八卦を重ねて六十四卦となす。

一変して二、二変して四、三変して八卦成る。四変して十有六、五変して三十有二、六変して六十四卦備わる
三変して八卦成る。

陽爻は九で表し、陰爻は、六で表す。
陽は、奇数、陰は偶数。

卦は、六爻から構成される。
六爻は、外卦と内卦に分かれる。
六爻は、天、人、地の相を表す。
六爻は、位・時・中を表す。
六爻は、時の流れ、変化を表す。

六爻は、少、壮、老の三段階を示す。
そして、始生、漸盛、旺盛、盛極、始衰、転復の位がある。
また、潜伏、顕現、成長、躍動、飛躍、充足の変化がある。

下から初爻、二爻、三爻、四爻、五爻、上爻という。

初爻と上爻は、人の相。二爻、四爻は、物の相、三爻と五爻は、金の相。

上爻は、事物の表象を映し、初爻は、事物の本質を象徴する。
事物の全体を知るためには、中間の四爻を通過しなければならない。

中爻を重んじる。

内の三爻が貞、主で本卦。外の三爻が悔、輔で之卦。貞と悔が交わる事で対立物は統一される。

外卦と内卦の同じ位置、例えば、初爻と四爻、二爻と五爻、三爻と上爻が陰陽を異にするのを応ず、同じ場合、応ぜずという。

二爻と四爻は陰位で三爻と五爻は陽位。初爻と上爻は位に入れない。

陽爻が陰位にある場合は、剛、陰に在り。陰爻が陽位にあるのを、柔、陽位に在るという。

 震 離 兌 乾 巽 坎 艮



(竹村亞希子 参照)

爻と爻の関係、順逆を見る。

隣接する上下の爻が一陰一陽であれば比という。
上の爻は陽爻、下の爻を陰爻である場合は、承けるという。
上の爻は陰爻、下の爻を陽爻である場合は、乗という。

初爻と四爻の関係をみる。なぜならば初爻と四爻は表裏の関係にあるからである。
同じように二爻と五爻、三爻と上爻の関係を見る。

二爻と五爻は、中爻である。
三爻と上爻の関係を確認する。
これらの関係を見たうえで中爻を重んじる。
そして、最後に初爻と上爻の関係を見る。


(竹村亞希子 参照)

一つの卦に複数の変爻が表れた時は、本卦を基礎とする。
本卦は現状を示し、之爻(伏卦)は、趨勢を表している。

また、錯卦(裏卦)と綜卦(賓卦・反卦)が重要である。
本卦を裏返した卦が錯卦であり、本卦を逆から見た卦が綜卦という。

経済の卦は、人・物・金の働きを表す。
物と金との卦は、錯卦(裏卦)となる。
残高と働きとは、錯卦となる。

また、互卦も参考となる。

変爻は、本卦の変易を表す。変爻は、本卦の過去・未来の形と相を顕わしている。

易に、変易、不易、簡易の三義あり。
何が変易で、何が不易かは認識の問題であり。
変易、不易は、前提によって変わる。
それを決めるのか人であり、簡易な事である。

変化の実相を知るためには、比と、構成と、変化を知る必要がある。
変化は、差として表す事ができる。

大切なの事は、何を変易とし、何を不易とするかである。

易を考察するうえで鍵を握っているのは、相と象である。
変わる事を相とし、変わらない事を象とするのである。

いくつかの卦を見て変化している部分、変化していない部分を見てその関係を明らかにする。

何が変わったか。何が、変わっていないか。その関係を明らかにする。
その次、爻の働きの強弱を見る。

易の根本は、二進法であり、パターン認識である。
これは現在の最先端技術に通じている。
二進法とパターン認識は象である。
変わらないのは、象である。

易の象には、探索木に通ずるものがある。
探索木が示すのは変易の象である。

経営の相を占うためには、何をどこに配するかが重要となる。

経営は、最も幾を重んじる。幾と微を知り、機と微ををとらえ。機鋒鋭く幾略をもって時を中てる。

経営分析に易を用いるためには、何をどこに配するかが鍵となる。

経営には太極あり、これより損益を生ず。損益は収益より生じ、収益は、総資本を基として八卦を生ず。八卦に金の流れを重ねて六十四卦となす。

経営は六十四相を持つ。

経営には、相があり、相を顕わすのは卦である。
経営の相を占うためには、何をどこに配するかが重要となる。
指標の配列を変えただけでも相や象は変化する。
また、どの指標を用いるかによっても相や象は変わる。



経営の卦は、できれば三期あるいは六期を比較する必要がある。
一期も半期、四半期、できれば月次の相を比較するといい。
そうすると変化の方向を見極める事ができる。

利益は、太極である。
利益は、一である。
一である利益は、経営の陰陽を生じる。

経営の陰陽は、常に反転して卦を作る。
増収増益、減収増益、増収減益、減収減益の経営の四象の卦を作る。

経営の四象が経営の卦のすべてを支配している。

経営の四象は、物流の錯卦である。
金が出る時、物が入り。物が入る時、金が出る。
表面の卦の裏に、実物の卦が隠されている。
裏の卦にこそ実があり、表の卦は、虚である。

増収増益の相は、乾と巽。増収減益の相は、坎と兌。減収増益の相は、艮と離。減収減益の相は、坤と震である。
比は、坎と兌、艮と離で、艮と離は、減収、則、陰が増益、則、陽を承け、坎と兌は、減益、則、陰が増益、則、陽の上に乗る。

決算残高と金の働きとは、錯卦となる。
資産と費用が増加する時は、負債と資本、収益が増加する事を意味し。
資産と費用の減少は、負債、資本、収益の減少を意味する。
資産が増加する時、他の資産や費用が減少し。
負債が増加する時、資本や収益が減少する。

外卦は、上段が利益、中段が収益、下段が総資本、総資産。
内卦は、上段が営業キャッシュフロー、中段が、投資キャッシュフロー、下段が財務キャッシュフローで構成されている。

上爻は、利益の増減を表す。くれぐれも損益を表しているのではない。利益の増減を表している。故に、分析をする場合は、赤字か黒字かを確認する必要がある。

分析するにあたってまず、卦を見る前に、赤字か黒字かを見る。
赤字か黒字かは、費用対効果の水準を表している。
赤字か黒字かは、収益と利益の関係を表している。

上爻の利益に影響を与えるのは、主として費用の動向である。中でも原材料の動向や為替の動向に大きく左右される。また、人件費の働きも無視できない。
五爻の収益の陰陽に影響するのは、売上であり、売上は、単価と数量の積として表される。つまり、収益に影響するのは、単価の高低と数量の増減である。単価と数量は市場で決まる。
市場の拡縮と需給が収益に影響する。市場の成長は、収益に陽に作用する。
円高は、輸出産業には、輸出品の単価に上げ圧力、即ち、陽の力が働き、収益にたいする下げ圧力、即ち、陰の力が働く。輸入産業には、単価に下げ圧力、即ち陰の力が働き、それだけ収益に上げ圧力、陽の力が働く。
この様な作用が売り上げの相の裏で働いている。
四爻の総資産、総資本に影響するのは、固定資産と流動資産の構成と働きである。固定資産の働きは陰で、流動資産の働きは陽である。
また、総資本は、負債と資本の占有率や構成、力の強さが重要である。

三爻の営業キャッシュフローの陰陽に影響するのは、減価償却費、運転資本、金利である。
運転資本は、在庫と営業上の債権、債務から発生する。
減価償却費は、キャッシュフロー上は、陽に働く。在庫と債権は、陰に、債務は、陽に働く。
投資キャッシュフローは、営業キャシュフローに反映する。
二爻の投資キャッシュフローの増減は、政策が大きく影響する。投資の実行は、陰に働く。
初爻の財務キャッシュフローは、負債の増減、資本の増減の影響が大きい。そして、四爻の総資本、総資産に反映する。

ミシシッピー大学のディキンソン博士は、企業のライフワークを創生期、成長期、成熟期、淘汰の時期、衰退期の五つの時期に分けた。



それを卦にしてみると震・離・艮・坤・乾・巽・兌・坎の順に並べられる。
震は創業期、離は成長期、艮は成熟期、坤、乾、巽となり、兌と坎は衰退期となる。

 
創生期 成長期 成熟期 淘汰期 淘汰期 淘汰期 衰退期 衰退期
営業キャッシュフロー
投資キャッシュフロー
財務キャッシュフロー

欧米のライフサイクルと東洋のライフサイクルの決定的な違いは、欧米型のライフサイクルは、不可逆的、一方向に流れているのに対し、東洋型のライフサイクルは、循環型である事である。

不可逆型だと、成長から衰退の一方向しかない。循環型だと革新と再生、復活、転生の可能性を示唆する。

全体の動きを見たら損益の相を見る。
損益は、初爻として、売り上げ、二爻として売上総利益、三爻として営業利益、四爻として経常利益、五爻として税引き前純利益、上爻として税引き後純利益とする。

貸借の相を見る。
貸借は、初爻は、収益の増減。二爻は流動資産の増減。三爻は、固定資産の増減。四爻は、固定負債の増減。五爻を流動負債、上爻を純資産の増減とする。

また、初爻、純資産の増減。二爻、負債の増減。三爻、固定資産の増減。四爻、償却費の増減。五爻、運転資本の増減。上爻を利益の増減によって個々の科目の働きを見る。

お金の錯卦、裏卦が、人と物の動きを表している。
初爻を生産高の増減、二爻を、社員数の増減、三爻を在庫の増減、四爻を総資産の増減の増減、五爻を収益の増減、上を利益の増減とする。

太極経済の目指すところは、中庸にある。
それこそが中国四千年の知恵である。

陽の力が強まれば、陰の力も強くなる。
陰の力が強まれば、陽の力が強くなる。
成長が極まれば負債も膨張する。
負債が圧縮されれば、成長力も弱まるのである。

経済で重視すべきなのは、陰陽の調和である。

一元にして復た始まる。
物極まれば必ず返る。

利物足以和義。貞固足以幹事。
物を利すればもって義を和するに足り、貞固なればもって事に幹たるに足る。(文言伝)

陽のみを是とせず、陰必ずしも否とはしない。
拡大や成長のみを是とせず。縮小や成熟をも是とする。
競争や争いのみを求めず、協調や調和をも求める。

競争は、技術革新を促し価格を抑制する働きがある。経済を活気づけ、発展、成長させる。しかし、行き過ぎれば利益を得る事ができなくなり、節度や調和を失う。
協定は、利益をもたらし、安定を約束する。しかし、経済を停滞させ、格差を広げる。協調は平穏無事である。
競争のみが是なのではなく。協調のみが是なのではない。

市場の活力が失われれば競争を促す政策をとるべきであり、市場が過熱したら競争を抑制する政策をとるべきなのである。
経済の根本は循環にある。成長なら成長、競争なら、競争という何事も一定方向の政策しかとらない、とれない現在の経済では、市場の安定を維持する事はできない。

義に反せねば利が求められなくなる体制はおかしく。利のために義を軽んずる社会には欠陥があるのである。

子程子曰、不偏之謂中、不易之謂庸。中者天下之正道、庸者天下之定理。
子程子(していし)曰く、偏らざるをこれ中(ちゅう)と謂い、易わらざる(かわらざる)をこれ庸(よう)と謂う。中は天下の正道にして、庸は天下の定理なり。


陰陽五行




市場取引は、第一に、貨幣は、貨幣単体で成り立っているわけではない。対象と働きがあって成り立っている。
貨幣の働きは、貨幣単体で機能を発揮するわけではない。必ず、貨幣の働きと等価な何らかの対象の反対方向の働きが一対となって成立している。(作用反作用の法則。)
第二に、取引の作用、反作用の法則が成り立つことで、市場取引の総計はゼロになる。
第三に、市場取引は常に均衡しようとする働きがある。

貨幣価値は、質量は、無限大の価値を持つ。
人や物の世界は、有限である。それに対して、数は無限に拡散する。
人や物の量と数の積である貨幣価値は無限の質量をもつのである。
この点を正しく認識していないと経済的価値を測る事はできない。

貨幣は陰の力を発揮する。貨幣は、交換価値を表象する。貨幣自体が使用価値を持つわけではない。故に、貨幣は虚であり、陰である。財は陽であり、消費されることで価値を発揮する。
市場価値は、陰陽一体となって構成される。
陰の力が市場に満ちると陽の力が抑えられ、陰陽の均衡が破られ、陰の力が相対的に弱まる。陰陽を生み出すのは人である。故に、太極は人にある。
陰陽は、人・物・金の働きが均衡したところで効用が発揮される。いずれかに偏ると陰陽は乱れる。人の労働、金の所得、物の生産これらを調和させる場が市場である。

現在の市場はお金に偏り過ぎている。即ち陰が勝っている。物の働きが相対的に弱く、その為に太極、即ち、人倫が乱れ、市場は修羅場、争いの場と化している。

お金は、市場を巡る事で効用を発揮する。お金が市場を巡る事で絶えず陰陽は所を変えている。陰陽が所を変える事で、市場は、拡大と収縮を繰り返す。
市場は拡大、成長ばかりしているわけにはいかない。拡大、成長する時と所があれば、縮小する時と所がある。そして、収縮期こそ政策の是非が問われるのである。

全体は、部分を統制し、部分は全体を構成している。
企業業績は、市場全体の動向に制約をされ、市場全体は、企業活動によって形成される。
市場は、不変的に拡大、成長し続けるわけではない。
市場全体は、拡大、収縮を繰り返す事によって、市場を構成する部分は、創生、発展、成熟、停滞、衰退、再生の変態をする。
市場は産業の拡大成長によって飽和状態に陥り、縮小していく。
市場が飽和状態に陥るまでが拡大成長期で、飽和状態になった後は、成熟、停滞、衰退期となる。
市場が飽和状態に陥ったら即、停滞衰退するかとは限らない。
ただ、市場の状態に応じて個々の企業の収益構造や市場の仕組みを変化させないと産業は衰退してしまう。

市場は、一つではない。いくつもの市場が集合して一つの全体を形作っている。
全体を形作る個々の市場には、それぞれ特性があり、一律に扱う事はできない。短期で消費する財もあれば、長い期間掛かって消費される財もある。取り扱う財の性格によって自ずから市場の性質、仕組み、構造にも違いが生じる。
一度、飽和点に達すると長期にわたって新たな需要が生まれない市場もあれば、絶え間なく需要を生み続ける市場もある。
市場に財が行き渡った後は、更新や改造、リサイクルに重点が移る市場もある。それに合わせて企業の収益構造や市場の仕組みを変えなければ経済は円滑に機能しなくなる。

絶え間なく、技術革新、新規ばかりに狙いを定めていると市場を土台から切り崩してしまう。市場の重要な役割は、必要な物、必要な量を必要なだけ生産し、それを働きに応じて分配することにある。
必要とするものは、新しい物ばかりではない。
市場が生成発展期においては、競争は、有効だが、飽和状態に陥り、成熟期になるとむしろ弊害となる。
成熟期では、競争や技術革新よりも協調や合理化が有効となる。しかし、協調や合理化も行き過ぎると市場が偏り停滞衰退を招く。必要に応じて規制の強化と緩和を繰り返し、市場の効率化を図る必要がある。

通貨の本質は、借金だという事を忘れてはならない。
貸し借りは市場全体では、零和である。貸す者がいて借金は、成り立ち。借りる者がいて借金は成り立つ。要するに、貸し借りは所得の過不足があとって成り立っている。過不足の所在が硬直すれば、この関係はおのずと成り立たなくなるのである。
故に、経済の本質は、中庸にある。

市場は、有限である。人口も財も有限である。
しかし、数値は無限である。貨幣価値は数値である。故に、貨幣価値は無限に生成する。
それが市場が無限に拡大しているかの錯覚を引き起こすのである。しかし、物的にも人的にも市場は有限であり、それが、物的経済成長の限界である。その物的限界を超えて貨幣が供給されると経済は乱調をきたす。

例えばコンビニである。2015年の時点で、北海道の人口は、550万人に対しコンビニの件数は3000店あり、一店当たりの人口は、1800人、これ以上の出店は、限界である。
(株式会社セコマ 赤尾昭彦会長談)

2016年2月26日に発表された平成27年の国勢調査において1920年調査開始以来初めて人口が減少に転じた。
総所得は、労働人口×平均賃金であるから、総所得を増やすためには、労働人口か、平均賃金を増やす必要がある。労働人口は、今後減少し続ける。そうなると平均賃金を増やす必要があるが、平均賃金は、生産性を基礎として測られる相対的値である。つまり、いくら名目的賃金が上がったとしても実質的賃金が上昇するわけではない。実質的賃金は、その国の生産性を基礎としているために、ある一定の水準に均衡しようとする。
それが先行している国にて対しては負荷となり、後続する国に対しては推進力となる。
故に、労働人口が減少し、平均賃金が高水準にある日本は、実質的総所得が増える余地は少ない。故に、量的拡大ではなく、質の向上によって経済の密度を高める方策をとる必要がある。それが少子高齢化が予測される日本の取るべき道である。

社会にも会社にも病がある。
社会や会社の病は、陰陽の働きが乱れる事で起こる。

市場経済は、人、物、金によって構成される。
故に、市場の実相を知るためには、人、物、金の働き、状態を明らかにする必要がある。
人の働きの基盤は、人口構成に現れ、物の働きの基盤は、生産に現れ、金の働きの基盤は、通貨の量と流れに現れる。
故に、市場全体の相は、下爻に生産、中爻に人口、上爻に利益として表す事ができる。

経済の働きには、生産、分配、消費、貯蔵、交易の五つの働きがある。
この五つの働きを活用するのが人、物、金である。
貨幣制度は、お金の循環によって物の流通を促す仕組みである。
人は、主体。物は、客体。金は媒体である。
人と物には実体があるが、「お金」には実体がない。

国の経済を動かす主体には、国、会社、家、金融、外国の五つがある。
国は、財政を担い、会社は、会計を担い、家は、家計を担い、海外は交易を担う。

人の世を治める力の性格には、仁、義、礼、知、信の五徳がある。

万物は流転する。経済もまた、循環する。
経済は陰陽の働きによって循環する。
陰陽の働きが乱れれば、社会や会社は病になる。
陰陽の働きを整え、社会や会社の流れを整えるのが、公の責務である。

経済には、陰陽の働きがある。

陰陽は、是非、善悪、成否の外にある。

是非・善悪は人が決める事である。
卦に、是非・善悪があるわけではない。

決断するは吾にある。易は、決断を促す為の指針である。
消長は時の定め。成否は、人の決断にあり。強弱は、物の性にある。
天地人。

是非・善悪は、人の行動にある。
行動は、人が決めるのである。

吉凶悔吝は、動に生ずる者なり。剛柔は、本(もと)を立つる者なり。変通は、時に趣(おもむ)く者なり。
吉・凶・悔・吝は、動きから生じるものである。剛・柔は、物事のはじめをたつものである。変・通は、時に対してめざすところのものである。

故に、是非、善悪より、剛柔・強弱を見る。

強弱は、変動幅によって陰陽を判定する。変動幅が大きければ陽、小さければ陰とする。
何をもって基準と成すかによって易の相は変わる。
大切なのは、何を前提とするかである。

経済的に成功したとしても悪は悪である。罪から逃れることはできない。
凶とわかっていても進むべき時があり。
悔いても決断すべき時がある。
卦に是非・善悪があるわけではないが、吉凶悔吝は、天道に還る。

吉凶とは、貞(てい)にして勝つ者なり。天地の道は、貞にして観(しめ)す者なり。日月の道は、貞にして明らかなる者なり。天下の動は、かの一に貞なる者なり。
吉凶とは、正しくしてまさるものである。天地の道は、正しくして示すものである。日月の道は、正しくして明るいものである。天下の動きは、吉凶と同じく正しいものである。

剛柔相推して、変その中に在り。辞を繋けてこれに命じ、動その中に在り。
柔がたがいにおし動かして、変はその中にある。卦爻にことばをかけて吉凶悔吝など名をつけて、動はその中にある。

陰陽は、剛柔の法である。
剛柔の調和によって経済は保たれるのである。

成長、拡大、今の経済は、一定方向の流れしか是認しない。
強弱、消長は働きの状態を言う。

強きは、弱きを助け。弱きは、強きを抑えるから物事は回転する。
弱きが強きを助け。強きが弱きを押さえれば、強きはいつまでも強く、弱きはいつまでも弱くなり、物事は膠着する。
消長は時の定め。成否は、人の判断の結果。強弱は、物にある。

陽の力が高まれば、それに伴って陰の力も上昇する。陽の力が弱くなった時、それに応じて陰の力も下げないと陰の力が過剰になって陽の力は発揮できなくなる。

現代社会では、対立、抗争、競争、緊張、成長、拡大、強化のみを是とするが、これでは世の中は、回らなくなる。
太極経済では、対立、抗争、競争、緊張、成長、拡大、強化を陽の働きとして、調和、協調、提携、緩和、縮小、抑制を陰の働きとする。
進むだけが能ではない。時に退く事も必要である。

拡大、成長のみが是なのではない。縮小、成熟も、また、吉である。
身を縮めるのは、躍動するために。
飛躍するためには、身を縮める必要がある。
何が是か非かは時に中る。

成長が常に正しいとは言えない。成熟を是とすべき時もある。
縮小は常に悪いとは言えない。縮小すべき時もある。
競争だけが善いわけではない。時には手を結ぶことは大切である。
何を是とし、何を非とするかは、時に中る。

世の中は、不易、変易、簡易である。

日は昇り、また、沈む。日は沈み、また、昇る。
禍福は糾える縄の如し。

陽の力、即ち資産価値が上昇すると債務の力も高まる。資産が下落した時、債務の力を抑えないと債務の力が過剰となって、資産価値の回復を妨げる事になる。それがバブル崩壊後の今日の経済状態である。
陽の力を抑えるのは、競争でも負債を増やす事ではない。提携や協調によって陰の働きを活発化させると同時に、過剰となった陰の働き、債務を抑制する事である。

現代社会は、白日の文明である。すなわち、陽の力を絶対化する思想に支配されている。しかし、陽の力が絶対的になると文明は砂漠化する。
陽の力は、陰の力があってはじめて本来の力を発揮する。
陽の力は善で陰の力は悪だと決めつけるのは間違いである。
陰陽の力が相和して全体の働きを保っているのである。
物事は、表に現れない陰の力によって調和が保たれている事を忘れてはならない。

物事には、変易、不易、簡易がある。
力が偏れば、市場の働きは乱れ、経済は変調する。
経済の働きは、相対的なのである。

太極は、混沌としている。

天は唯一であり、絶対である。

全体は一である。全体の総和は零(〇)である。
太極は零であるが故に天、即ち、全体は一となる。
一から、陰陽の二が生じる。天は陰陽を含んで三となる。

全体の総和がゼロのような事象を零和という。
市場は、垂直方向にも、水平方向にも零和となる。

太極は零和である。

政府、金融、企業、家計、外国は、人、物、金によって構成される。
政府は、分配を、金融は蓄積を、企業は、生産を、家計は、消費を、外国は交易を司る。
生産から消費は生れ、消費から交易が生まれ、交易は、分配を生じ、分配から蓄積が生じる。

「お金」の流れは、政府が国債を発行し、国債を担保として中央銀行が、金融機関に「お金」を貸し出し、金融機関が企業に貸し出す事で市場に供給され、供給された資金に基づいて企業から賃金として家計に支払われ、消費されることによって交易が生じる。交易によって「お金」の価値は定まる。また、外貨準備として政府に蓄えられる。
また、政府の働きは、分配、金融の働きは、蓄積、企業の働きは、生産、家計の働きは、消費、海外の働きは、交易に象徴される。

政府、金融、企業、家計、外国は、「お金の流れ」によって結ばれている。

お金の流れに沿って土を政府、金を金融、水を企業、木を家計、火を外国とする。
政府機関には、中央銀行も含まれる。

「お金の流れ」は、貸し借り、売り買い、取得と支出と貯蓄によって作られる。
中央政府が金融に金を貸し、金融機関が企業に金を貸し、企業が家計に所得として金を支払い、家計が物を市場から買う。足りない物資を外国から調達する。

物の流れは、企業は、物を生産し、家計は、物を消費する。海外は、物を交換し、金融は物の流れを促す。財政は、物の分配の基礎を作る。
その局面局面で人は働き報酬を受ける。

「お金」は、循環してその効用を発揮する。
水が高きから低きに流れるように、過剰なところから、不足しているところに金は流れる。

過剰な部分は、不足した部分を補うように働き、不足した部分は、余剰部分を吸収するように働くと全体は一となる。
過剰な部分が不足した部分から「お金」を吸い上げたり、不足した部分が過剰なところを補うようにすると全体は統一性を失い、分裂する。
市場全体の経済量は、零和なのである。

「お金」を循環させるのは、空間の歪である。
「お金」を偏らせるのも空間の歪である。
「お金の流れ」を作るのは、空間の歪だが、その歪みを放置すると「お金の流れ」に偏りが生じる。
「お金の流れ」の偏りは、滞留を生み、「お金の流れ」を悪くする。

「お金」は負、即ち、陰の力を持ち、陰で働く。
貨幣経済が、活発化すると陰の力が強まる。

名は不易。実は変易。差は、力となり簡易。
例えば、会計上、土地の簿価は、不易。時価は、変易。簿価と時価の差は、資金の調達力を示す。

木は火を生じ、火は土を生じ、土は金を生じ、金は水を生じ、水は木を生ず。(五行相生)
水は火に勝(剋)ち、火は金に勝ち、金は木に勝ち、木は土に勝ち、土は水に勝つ。(五行相剋)





損益は、人から資金を借りて資産に投じ、資産は費用に変じ、費用が収益を生んで、利益となり。利益は資本となる。
損益は、負債が金、資産が水、費用が木、収益が火、資本を土とする。

石油・石炭業界の2008年の卦は、地山謙、即ち、上坤、下艮の卦である。出光は、2013年が地山謙の相である。
これは、外が最悪の相で、内が最良の卦と言っていい。

2008 2009 2010 2011 2012 2013
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15.地山謙

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21.火雷噬嗑


41.山沢損


10.天沢履
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19.地沢臨
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61.風沢中孚

利益の減少は、売上総利益の減少か、費用の増加を意味する。売上総利益の減少の原因には、原価の上昇がある。費用の増加は、損益分岐点の移動が考えられる。
収益の減少は、売上の減少を意味する。売り上げは、単価と数量の積である。すなわち、単価が下がったか、数量が減ったか、その両方が考えられる。
総資産の減少の原因は、流動資産の減少か、固定資産の減少が考えられる。総資産の減少は、総資本の減少を意味し、総資本の減少は、負債の減少か、純資産の減少。負債の減少は、流動負債の減少、固定負債の減少のいずれか、あるいは両方の減少である。
営業キャッシュフローの増加は、減価償却費の減少、運転資本の減少、支払利息の減少が考えられ。また、税引き前利益のの上昇も考えられる。税引き前利益の上昇は、特別利益を計上する事で得られる。
運転資本は、売上債権の減少、在庫の軽減、買い入れ債務の上昇が考えられる。在庫は、仕入れ単価の低下か在庫量の減少による。
投資キャッシュフローの減少は、固定資産の増加か、投資有価証券の増加として現れる。これらは、資産勘定だから損益上には現れてこない。
財務キャッシュフローの減少は、基本的には、借金・負債の返済を意味する。負債の減少は、流動負債の減少なのか、固定負債の減少なのかが問題となり、流動負債は、短期借入金の返済なのか、買い入れ債務の減少なのかが重要となる。

地山謙の卦辞は、天の道は満ちたものは欠けて謙に益し(満ち欠け)、地の道は満ちたものを変化して謙に流し(浸食)、鬼神(神と霊)は満ちたものにわざわいして謙にさいわいし、人の道は満ちたもの(驕慢)を憎んで謙(謙遜)を好む。

謙は尊くして光り、卑けれども踰(こ)ゆべからず。君子の終りなり。
謙遜は尊くして輝き、低きにあってもこえてはならない。君子がついには通るところである。

現代経済の最大の間違いは、成長と拡大、発展のみを是としている点にある。
気を付けなければならないのは、成長と拡大は必ずも一体ではないという事である。
経済が成長している時でも、市場が拡大しているとは限らない。

例えば、個人所得と物量との関係である。多くの物を手に入れるためには、多くの所得を必要とする。財の生産量を上回る所得が必要となる。しかし、財を生産するためには、相応の費用が必要となる。費用の大部分を占めるのは人件費である。財の生産量を増加しようとすると人件費の高騰を招く。
人件費とは、個人所得である。つまり、多くの財を得ようとすると所得を必要とし、所得は財の価格を引き上げるのである。これでは鼬ごっこになる。
市場の拡大と所得の上昇が調和していればいいが、仮に財の需要が減少するとそれまで所得を上昇してきた圧力が下げ圧力に転換してしまう。
これを解消するためには、生産手段を合理化する以外にないが、それは人件費の削減につながるのである。つまり、拡大だけ目指しても経済成長は維持できないのである。
市場の拡大は、総所得の上昇が伴わなければ、維持できない。総所得は、生産人口と平均賃金の積である。総所得の上昇を維持しようとした場合、生産人口の増加を計る、平均賃金を上昇させるしかない。生産人口が減少に向かった時、平均賃金を上昇させなければならないが、それに応じて生産性も高めなければならない。これジレンマである。
だとしたら、人口が減少し、市場が縮小しても維持できる経済体制にする必要がある。
そのために求められるのは、量から質への転換なのである。そして、それを可能ならしめるのは、付加価値の均衡を保つ事なのである。
要は、付加価値の問題に還元するのである。
付加価値とは何か。付加価値とは、地代、家賃、減価償却、人件費、金利、税、利益の和である。これは粗利益を指す事もある。
減価償却費と地代家賃は、資本を表し、人件費は、家計、金利は金融、税は、政府、利益は、企業を代表する。
家計、金融、政府、企業、外国に対する力の配分、「お金」の循環が経済を動かしているのである。

五行とは、政府、金融、企業、家計、海外の力の均衡を調和させることを目的としているのである。

易の本源は、三皇五帝にある。
易は、中国の深淵から発する。

太極は、中。

天は唯一であり、絶対である。
神も唯一であり、絶対である。

西は神を信じ、東は、天を敬う。

太極は天にある。太極は神にある。
天と神とは合一である。
天と神が和して東西南北一体となる。




太極経済
太极经济
经济在于阴阳
续太极经济
続太極経済
石油・石油業界の卦
民主主義と陰陽
経済と陰陽五行
経済と陰陽五行
経済陰陽五行実践
经济与阴阳五行
民主主义与阴阳五行


参照
北海道のコンビニの業界に関する 株式会社セコマ 赤尾昭彦会長談
550万人ほどの人口に対して、業界全体で約3000店あります。1店当たり1800人程度の計算になります。新規出店すると、自社の既存店と顧客を食い合う段階まで来ました。これ以上は下手に店を出せない状況です。
日経ビジネス 2015年12月21日(月)




       

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