負債、資本、の圧力


重要な事は、市場全体の貨幣的価値の総計は、零和だという事である。
貨幣価値の総計が零和だという事は、赤字が是か非かではなく。どの部門が赤字主体で、どの部門が黒字主体かです。

部門ごとの収支を明らかにするためには、収支の全体を把握する必要がある。
収支は基本的に以下の式が成り立つ。
投資+消費+貯蓄+借金の返済=支出
資産の売却+所得+借入金+過去の蓄積の取り崩し=収入
収入と支出は常に一致している。収入と支出の総研は、零和である。

それに対して国民経済計算書は単位期間内の所得を核として損益計算されている。
即ち、単位期間内の損益は、所得=消費+蓄積である。
損益の総計も零和である。

蓄積は、貯蓄と資本移転を意味する。
蓄積は、資産と負債、資本として累積する。

余剰資金は、貸し借りによって負債に蓄積される。
貸し借りは、全体として零和になるから、貸し借りの主体が入れ替わらないと負債は、一方的に蓄積され増加の一途をたどることになる。
それは、資産、負債、資本のストックを増大させる。
資産、負債、資本は、地代、家賃、利息、利益、償却費の分母となる。資産、負債、資本が増大すれば、分子である地代、家賃、利息、利益、償却費を圧迫する。収益が伸びず、あるいは、減少に転ずれば、利息や利益は圧迫される。

所得は、消費と蓄積の和であり。蓄積は、投資と貯蓄となる。
投資と貯蓄によって、資産と負債、資本を形成される。
そして、負債と資本は、金融勘定と資本勘定に振り分けられという事である。

可処分所得は公的支出と金融支出を所得から差し引いたものである。
ただ問題なのは、会計上、金融支出が認識されていない点にある。即ち、負債の元本の返済資金が会計上どこにも計上されないと事である。

企業会計では、負債の返済資金は、償却費の形で確保されるが、実際の資金計画との間には時間的ズレが生じる。

借金の元本は収入の範囲で返済していく事を原則とする。
収入は、一つは、所得である。二つ目は、貯蓄の取り崩し。三番目に、資産を売却する。そして、四番目に、借金である。
一般に、借金の元本と金利は、所得の範囲内で返済をしていく。
返済額が上昇するとそれだけ収益の中で自由できる資金、即ち、可処分所得が減っていく。借金の元本の返済金は、基本的に固定的支出なのである。
収益の範囲の中で返済ができなくなると返済は、過去の蓄積か新たな借金、所得によって賄われる。それでも足りなければ、資産を処分することになる。
生計が圧迫されるのは、借金の返済が嵩んで可処分所得が圧縮されることによる。特に、所得が横ばいだったり、減少するといわゆるサラ金地獄に陥る。サラ金地獄の怖さは、無自覚なうちに進行し、気が付いた時には、手が付けられない状態に陥っている事である。これは国家も同じである。

各部門の単位期間の過不足は、政府は、歳入-歳出、金融は、受取金利-支払金利、、フリーキャッシュフロー、家計は、所得-消費支出、海外部門は、輸出-輸入によって判定される。
各部門の総体の過不足は、総支出(投資+消費+貯蓄+借金の返済=支出)総収入(資産の売却+所得+借入金+過去の蓄積の取り崩し=収入)の増減によって判定される。
投資は、固定資産、資本形成の増減を意味する。

そして、各部門の過不足の変換をどう調整するかを裁定するのが政治である。

問題なのは、何でもかんでも赤字は悪いとか、黒字なければならないと思い込んでいる事である。
全体がゼロ和であるならば、黒字の主体があれば自動的に赤字の主体が派生するのである。問題は、程度であり、また一過性か、恒常的かなのである。
強引に黒字を維持しようとすれば、あるいは、全員が黒字にしようとすれば必然的に緊張が高まり、経済の仕組み全体を危うくしてしまう。
黒字か、赤字かというのは部分の問題であって全体から見れば過不足の問題なのである。

表面的には、所得の配分は、消費と貯蓄に振り分けられると考えられている。
しかし、現実の支出は、消費+貯蓄+借入金に対する返済である。そして、消費、貯蓄、借入金の返済の和が所得を上回った場合、上回った部分が新たな借入金、即ち、運転資本となる。そして、消費、貯蓄、借入金の返済額と所得の関係が景気の実際を決めるのである。

重要となるのは、収入に占める借金の金利を含めた返済額が一定の限度を超えると新たな借り入れができなくなる。これは、社会全体でも同様である。

債権と債務の残高の水準がどの程度まで上昇しているか、それに対して所得の水準がどの程度なのかそれが経済政策を建てるうえで重要なカギとなる。

収入に占める金融支出を正確に把握していないと経済全体にブレーキがかかる事になる。
最悪の場合経済を破綻させてしまう。




       

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