68、朝三暮四



朝三暮四的な発想が経済にはある。総量は変化していないのに分配に違いが出て、それが価値の総量を変動させてしまう。

経済の本質は、いかに生産的な費用を増やすかにある。
要は効用であり、付加価値である。第一、経済成長は、付加価値の増大を意味する。現在行われている経費削減は、付加価値の削減を意味している事を忘れてはならない。
つまり、経済の問題というのは、付加価値の分配と総量の増減問題に還元できる。

仮に人口や物の消費量も生産量が変化しないと仮定したら価格は通貨の量に左右される。確かに、表面だけ見たら経済は、純粋に貨幣的現象だと言える。
しかし、人口も、消費量も生産量も絶え間なく変化しており、単純に貨幣だけの現象だと断定する事はできない。
経済の実体は、本来、人口と、消費量と生産量に還元されなければならない問題なのに、現代経済は、貨幣的現象に振り回されている。極端な場合、貨幣の動きでしか経済を理解しようとしていない。それが経済の本質を見誤らせているのである。

現在の経済学は、対処療法的な学問になっている。そのために抜本的対策が立てらない。

経済は、個々の局面に注目しただけでは理解できない。それは経済は分配の仕組みであって分配は、全体の状態と部分の働きを合わせて見なければ意味が解らないからである。

経済規模を制約するのは、貨幣ではなく、人と物である。
なぜならば、貨幣は、数値であり、実体を持たず、無限だからである。それに対して、人と物は、実体を持ち有限である。故に、市場規模を制約する実質条件は、人と物によって形成される。
表面上、貨幣価値は量でしかない。それに対して、人や物は、量と質からなる。故に、実体的経済には、質量、密度がある。

経済の実体を理解する上では、この密度を理解する必要がある。

貨幣価値の働きには、密度が深くかかわっている。故に、現在のように経済を二次元的にしかとらえられないと経済の全貌を把握する事はできない。また、物理学を応用する事もできない。
経済的現象に密度が深くかかわっているとしたら、経済現象はどちらかというと統計熱力学的な世界である。

経済を考える上では、復元力が重要な意味を持つ。
市場の重心がどこにあり、引力と斥力がどのように働いているか。また、会計法則に基づく作用反作用を正しく理解しておく必要がある。

近代経済の特徴は、社会的分業の深化によって生産地と消費地が分離した事である。それに伴って職場と生活空間が別々のところに形成されるようになり、その隙間と距離を埋めるように市場や貨幣制度が形成されたのである。
そして、地域の生産力と消費量の不一致が、地域間格差を生み出す事になる。
人口は、労働と消費の基数となる。そして、労働は生産の資源となり、消費は生活の根拠となる。
生産と消費の基礎はいずれも人口であるが、生産労働人口と消費人口に歪が生じ、それが格差を生み出す原因となっている。
労働と分配の均衡を図るのが経済の本来の在り方なのである。

それ故に、分布と偏りが重要な要素となる。統計の意義は、分布と偏りを見出して是正する事にある。


       

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