機能主義

会計を構成する要素


 会計制度は、通貨によって動いている仕組みである。資金は、会計制度の動力、エネルギーだといえる。エネルギーは力であって無形な働きである。
 通貨の力、即ち、資金力は、電力と言うよりも水力に似ている。水力発電機は、水の流れによって水力が生じ、発生した水力によって発電機を動かす機械である。
 水力によって動く機械や仕組みは、水の流れによる力によって動くのである。仕組みや機械の中に水がなかったり、水が静止している時は、水力は生じない。
 財務情報を視る時に注意しなければならないのは、財務諸表に表示されている数値は、実在する通貨の量を表してた数値ではないと言う点である。財務諸表に表示されている数値は、通貨が流れた痕跡に過ぎない。表示された数値だけの現金が用意されているわけではない。数値が指し示した対象の貨幣価値の水準を示した値に過ぎないのである。

 会計制度、資産、負債、資本、収益、費用の五つの要素からなっている。これら五つの要素の働き、資産の働き、負債の働き、資本の働き、収益の働き、費用の働きが市場の動きを支配している。
 そして、これらの五つの要素を機能させているのが貨幣の働き、即ち、機能である。

 先ず総資産と総資本は、帳面上均衡していることが前提となる。帳面上均衡しているという事は、会計的に均衡していることを意味する。

 資産には、事業用資産と金融資産がある。また、資産は、換金しやすさに対応して固定資産と流動資産に区分される。また、資産の貨幣的外形によって非貨幣性資産と貨幣性資産が分類される。
 また、将来、損益上において費用化されるかどうかで、費用性(償却)資産と非費用性資産に分類される。

 負債と資本によって総資本は成り立っている。負債と資本の違いは、負債でいえば元本、資本でいえば元金を返済するか、しないか問題である。資本というのは、永久に元本を借り続けている負債のようなものである。
 この違いは、経営の安定性に重要な影響を与えている。景気が悪化した時、金融機関や債権者が資金の回収を測ると負債に依存している企業は資金に窮することになるからである。逆に、外部資本に頼っている企業は、経営権に影響がでる。
 負債と資本のもう一つの違いは、金利と配当の違いであり、金利は元本に関連付けられ、配当は、利益に結び付けられている点である。

 利益は、会計的にいうと収益から費用を引いた数値である。しかし、利益は一様ではない。何を収益とし、何を費用とするかによって利益は違ってくる。そして、利益を生み出すのは、人間の活動であることを忘れてはならない。利益は、社会的な産物であり、人間が、市場の活動を通じて作りだした会計的結果である。つまり、利益がでるでないは、社会の仕組みと人間の活動の相互作用によって決まるのである。利益は、自然に委せれば計上されるものではない。そして、利益は、会計的概念である。

 ドクターヘリを運営している企業が赤字で存続が難しいというニュースをテレビの報道番組で取り上げていた。なぜ、有益だと社会的に認められている事業が成り立たないのか。それは利益にある。
 現実よりも会計処理、つまり、観念、理屈が先行し、現実の経済を左右している。会計の論理が現実の経済を左右しているというのに、専門過ぎて会計の論理が問題にされることは稀である。わけの解らないことに、わけの解らないまま振り回され、的はずれな所を検討し、それでいて結局、出された結論に従わざるをえないことが問題なのである。
 会計をあたかも所与の原理であるかのごとく錯覚していることが原因なのである。会計は、あくまでも人為的尺度である。重要なのは、その背後にある経済の有り様なのである。
 社会に必要で有用な事業をただ儲からないからという理由だけで葬り去るとしたら、本末転倒なのである。それが社会にとって必要で、有益な事業ならば儲かるようにすればいいのである。
 逆に、社会にとって悪影響しか与えないのに、儲かるからと言って繁盛させてしまうのもおかしな話である。最近のテレビが視聴率に振り回され、良質な番組が視聴率が低いからといって淘汰され、俗悪な番組を、視聴率が高いからと言ってもてはやしているのは、好例である。
 根本に、公器であるテレビ放送を、どの様に社会に役立てるべきかという発想が欠如しているのである。結局、テレビ放送を私物化して儲けの手段にしているに過ぎない。

 利益を上げることを、経営主体の至上命題と仮定するならば、企業や社会の有り様が悪くて利益が上がらないとしたら企業や社会の仕組みや経営の仕方を変革する必要がある。重要なのは、事業の存在価値、効用なのである。

 利益を評価する場合、赤字だから良いか、悪いかの問題ではない。
 利益には、いろいろな意味がある。赤字にも、いろいろな理由、原因がある。経営者の不可抗力による利益や損失もある。為替の変動によって利益がでたり、赤字になったりもする。また、生鮮食料のようなものを扱う産業は、災害やその年の作柄に利益は左右こされる。待て、石油産業のような原産地が限られている産業は、政治的なリスク、地政学的リスクに収益は影響される。
 損失も、一時的な赤字なのか、それとも継続的な赤字なのか。赤字になるのは、産業の構造的な問題なのか。それとも、経営者の能力の問題なのか。
 なぜ、何の目的で、何を基準にして利益を上げるのか。利益の元は何かを明らかにしないで利益ばかりを追求しても経済をよくしていることにはならない。それは、意味もなく働いているだけである。何のために、利益はあるのか、それが重要なのである。
 利益もただ上げればいいというわけではない。過剰な利益は、かえって弊害を引き起こす素となる。

 利益は、結果というより目的、目標であり、多くの場合、結果が出た時は手遅れである。利益は、経営を継続するための一つの指標である。だからこそ、企業は、赤字でも継続できるのである。その為の利益である。
 元々、経営状態を、現金収支から判断していた。しかし、それでは、投資と費用の関係が掴めない。だから、現金収支から期間損益、主体の会計になったのである。
 キャッシュフローが流行っているが、その辺の事情をよく理解しておく必要がある。利益を客観的事実であるかのごとくいうのは間違いである。利益をどう設定するかは、経営の実体をいかに反映するかの尺度の問題なのである。
 利益によって経営の実体が理解できなくなってきたのは、利益が経営の実体そぐわなくなってきたことが原因なのである。それは、何に利益を求めるかを明らかにしていないからである。

 そして、為替や石油価格の高騰のような経営上の不可抗力から生じた損失にどう対処するか、また、過大な利益をどう社会に還元するのかの方がより本質的な問題なのである。その為に、利益をどう定義し、どう設定するかが重要なのである。

 何が、何でも増収増益でなければならないと言う考え方が危険なのである。減収や減益でも、赤字だったとしてもその原因が明らかであれば対策の建てようがある。
 目的があって利益は、人為的に計上される。つまり、目的に応じて、利益の計算の仕方は決められるべきものである。

 重要なのは、企業業績は、基本的には、長期的に見て事業が成り立つか否かが重要なのである。また、事業が成立しないとしてもその原因が何かである。
 事業というのは、単に採算性だけが問題なのではない。利益が上がらなければ、上がらないなりの原因がある。その原因を明らかにすることが重要なのである。

 利益は、拡大均衡によってのみ得られるものではなく、縮小均衡によっても得られる。問題は、利益を上げるために、何が作用し、何が犠牲になったかである。問題なのは、拡大均衡によって得られた利益が妥当なのか。縮小均衡によって得られた利益が妥当なのかである。その妥当性は、その利益を計上する上での前提に関わる。つまり、市場の状況、景気の動向、その産業の社会的有用性などである。また、その産業の社会的働きも重要である。社会的働きは、生産性だけで測られる性格のものではない。

 金融機関が目先の利益ばかり問題として事業の将来性を見誤れば、経営は、成り立たなくなる。
 流行の産業ばかりをもてはやし、社会に有用な産業を軽んじたら、その国の未来はない。

 会計的な位置と運動と関係から働きは生じる。それは構造的な働きである。構造的な働きとは、複数の要素が、相互に影響することによって生じる作用である。
 働きは、時間の関数であるから、会計にも時間は関係してくる。

 位置は、価値を定め、運動は、価値を変化させる。運動には、外部運動と内部運動がある。位置エネルギーは価値を持ち、運動エネルギーは、価値を生み出し、関係は、位置や運動の働きを明らかにする。

 位置によって示される価値は、静的な価値である。それが変化するのは、市場に現れる事によってである。静的価値は、潜在的な価値を持つ。その価値は、貨幣価値が成立することによって債権と債務の関係によって生じる。貨幣価値を顕在化するという事は、資金力、資金調達能力である。

 会計において、重要な概念に時間の概念がある。会計は、会計期間を定め。その期間内で損益を決算する。

 家計を損益、貸借によって管理しようとしても現実的ではないであろう。会計で一番問題になるのは、月々の収支であって損益ではないからである。この事は、ある意味で期間損益の意義、意味を表している。また、企業経営のわかりにくさの一因でもある。しかし、期間損益が確立されたからこそ、経営の長期的均衡が可能となったのである。

 貨幣経済で重要なのは、流動性である。流動性は、速度の問題である。速度は、単位時間あたりの変化の量として認識される。
 価値の総量は、定数+変数(単位あたりの変化の量)×時間と言う式で表される。変数は、基数×率によって定まる。

 期間損益が確立されることによって、会計的な位置と運動と関係が定まる。それが会計的機能の起源である。

 そして、利益は、期間損益に基づいて導き出される数値である。つまり、利益は、時間の関数である。つまり、利益というのは、元々会計的操作によって導き出された概念なのである。

 時間は、変化の単位であり、変化は、速度が重要であるから、期間損益では速度が重要な要素なのである。

 故に、期間損益では、速度も重要な要素の一つである。会計制度において、時間の概念は、重要な意味を持っている。そして、時間の概念は、速度に還元される。速度は、流動性と固定性の概念を構成する。

 貨幣経済下において市場価値を仲介する物は貨幣である。故に、市場価値は、貨幣価値と言っていい。貨幣は、交換価値を表象したものであり、交換の目的は、所有権の転移と消費である。つまり、取引の目的は、所有権の転移と消費である。所得の転移は、資産と負債、消費は、収益と費用の概念を生み出す。
 さらに、所得の移転と消費は、現金化される速度に関係している。所得の転移と消費が取引の基準だと言う事は、資産と負債と収益と費用が、現金化される速度の問題なのである。

 基本的に変化が表面に現れない勘定科目に属する部分、時間が陰に作用する部分を貸借対照表上にあらわし、変化が表に現れる勘定科目を様に表した。それが固定という概念で、流動性に対応している。

 流動性というのは、その物や権利が持つ現在的貨幣価値の変化の速度を言う。即ち、現金化される速度を流動性という。現金は、その時点における貨幣価値を実現した数値、あるいは、数値を公式に表象した物である。
 現金化されるという事は、その時点で消費されることを意味する。消費されるという事は、費用化されるという事である。つまり、資産や負債というのは、現金化されるの留保した状態、又は、待機した状態と言える。

 時間が陰に作用しているか、陽に作用しているかが重要になる。
 現金は、時間的価値は、陰に作用する。つまり、時間的価値は、表面的なは現れない。
 その物や権利は、資産及び負債である。資産、及び、負債は、債権や債務を派生させる。債権と債務は、時間的価値が陽に作用する。故に、その速度が問題になるのである。
 速度の速い物や権利を流動的といい。速度の遅い物や権利を固定的という。

 貸借の均衡は、資産、負債の時間価値の均衡によって保たれている。それは、資本(純資産)の増減として現され、最終的に現金の過不足に還元され、清算される。

 資産には、費用として消費されるのを留保した状態の財と取得した時点で費用化する権利を取得した財との二種類がある。前者を費用性資産、あるいは、償却資産と言いい。後者を非費用性資産、非償却資産という。
 資産に掛かる費用というのは、基本的に、所有に掛かる費用という性格を持つ。つまり、維持費+時間的価値なのである。時間価値は、見かけ上の利益や損失を生み出す。それが未実現損益である。

 負債は、負債が成立した時点の現金価値から返済された額を引いた数値として表れる。また、負債は、時間的価値として金利を派生させる。金利は、発生した時点で現金化され、費用化される。

 費用とは、現金化され消費された財を言う。費用化された部分には、時間的な価値も含まれる。

 負債から派生する時間的価値は、金利である。これは貨幣が生み出す時間的価値である。それに対して、資産が派生する時間的価値には、二種類ある。一つは、資産が直接的に生み出す収益である。典型的なのは、不動産が生み出す地代、及び、家賃に相当する価値である。それから、装置、設備から間接的に派生する償却費である。

 また、資本から派生する費用が配当である。

 この様に、資産や負債、資本コストは、費用化されるのを待機した状態にある。つまり、費用は、事後的に発生する。
 その為に、費用対効果は、必ずしも現金の収支を基としているわけ費用ではなく、発生が認識した時点で換算される。それに対し、収益は、収益が実現したと認識された時点における現金価値を指して言うのである。それが発生主義である。つまり、発生主義は、現金化されたとされる時点、その時点での現金価値をどう評価するか、その認識の仕方で費用や収益の現金価値に差が生じるのである。必然的に利益にも差が生じる。この差を利用すると合法的に利益を操作することが可能となる。

 つまり、利益は、会計上創られた概念なのである。

 成長が止まるとそれまでの債務の残高や償却費用、資本費用が期間損益に対して圧迫要因となる。また、資産価値の低下は、資金調達の裏付けを崩壊させるために、それだけで収益の圧迫要因になる。成長から停滞への変化は、必然的に市場の質を変化させるのである。
 返済資金と賃貸料、所得にかかる費用の長期的均衡と短期的均衡をどう調整するかが、重要になる。そして、それは、経済全体にも重大な影響を及ぼすのである。その典型がサブ・プライム問題である。

 この様に、期間損益とは、収益と費用、資産、負債、資本、それぞれの要素に働く時間の作用と個々の要素がどの様に関わっていくかによって決まる。
 それは、所有と金銭の借入、物的の借入の何れを選択するかの問題なのである。つまりは、人、物、金の関係によって利益は創作されるのである。

 利益は、会計上、中軸となる概念であり、会計制度を基盤とする経済体制では、経済の動向に決定的に影響を及ぼす概念である。会計基準の変更や経済政策を立案する際、この事を念頭に置いておく必要がある。

 損益は、本来、変動、即ち、運動を基として、貸借は、固定、即ち、位置を基とする。資金は、原因と結果であり、軌跡である。そして、原動力となる価値には、潜在的な価値、潜在的な力と顕在化した価値、即ち、顕在的な力があり、潜在的な力と顕在的な力とでは働きが違ってくる。

 動的なものは、流動資産、流動負債、変動費となり、静的なものは、固定資産、固定負債、固定費となる。

 費用の働きは、変動費と固定費によって違う。また、費用としてみなされるか、資産としてみなされるかによっても違ってくる。

 支出を考える場合、投資か、消費かも重要な要素である。投資であれば資産に振り分けられ、消費であれば、費用に振り分けられる。

 支出を伴わない費用、例えば減価償却費、また、収入を伴わない収益、例えば、売掛金などがある。
 費用性資産は、期間損益を成立させた重要な要因の一つである。費用性資産とは、費用の塊のような資産である。また、清算時点において価値があるかどうか判明しない資産である。

 この費用性資産の存在と働きが、期間損益に重大な意味を持たせている。何を費用性資産とするか、どの様に処理するのかによって期間損益が大きく変化するからである。そして、その処理の仕方が任意であることによって利益に対する解釈がいかようにでも出来るのである。

 現実の資金と損益の動きを結び付け、実際の資金の過不足を計るためには、減価償却費+税引き後利益で長期借入金を割った値の変化が意味することを知る事である。それは、債務の実質的な変化を意味するからである。
 それに、固定資産、流動資産、固定負債、流動負債、純資産、収益と費用にそれぞれの割合が示す値が重要となる。

 もう一つ重要なのは、税は、利益に対して課せられるという点である。しかも、税というのは、収支に関わりなく資金の流出をもたらすという点である。




                    


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