時    間


物価と時間的価値


 宝探しが、時々、話題になる。埋蔵金を見つけだして一攫千金を狙うのである。小判は、現在でも、小判が流通していた時代の価値、また、それ以上の価値を保存しているのである。 だから、埋蔵金には、探し出すだけの価値がある。三世代にわたって、徳川埋蔵金を探している家族まで居ると聞いたことがある。
 紙幣には、その様な価値はない。仮に、何世紀か過ぎた後で掘り出されたとしても、むろん、歴史的な資料、あるいは、蒐集的価値以上の価値は持たないであろう。

 それは、現金は、現在の貨幣価値を指し示す数値であり、紙幣は、その価値を表象した証券に過ぎないからである。

 紙幣というのは、返済する義務を持たない国家の借用証書みたいなものである。ただ、国家の信認がなくなれば紙幣は有効である。そして、紙幣は流通している限り、有効なのである。紙幣は、流通しなくなれば価値がなくなる。だから金は回し続ける必要があるのである。

 紙幣そのものは、交換価値を現し、実質的に債務が生じない仕組みになってはいる。しかし、紙幣の本質は、返済する必要のない公的債務なのである。つまり、紙幣の増加は、公的債務を増やしていることになる。

 金利は、約定によって、物価は相場が決める。そこに金利と物価の本質的な差がある。金利は貨幣に対して時間的に価値を附加することであるが、物価は、物の価値の時間的価値を現している。故に、金利には、名目上、マイナスの価値はないが物価には、名目的にも、マイナスの価値がある。
 それがインフレやデフレの原因ともなる。

 好況期も不況期も生産財に対する生産能力も労働力も消費力もほとんど変わらない。では、何が好、不況を分けるのか、それは貨幣の振る舞いである。

 時間的価値は、基本的には、債務を圧縮する効果がある。要するに、インフレは、債務の圧縮する効果がある。それがインフレ期待となって現れることがある。借金をして、経営資源を確保するのは、手に入れた資産は、物価に連動して上昇するのに対して、債務は、時間的価値によって圧縮されることを暗に規定しているからである。

 時間的価値が経済に附加すると利子の付かない貨幣、即ち、現金の貯蔵は、貨幣価値を劣化する。それが預金、貯金を促進させるのである。預金、貯金は、金融機関からすると借入であり、債務である。

 相対的な現象には二面性があるのに、日本人は、一面しか見ない。債権と債務は、常に均衡しているのである。我々は、せっせと資産を増やしているつもりが負債を増やしていることにもなる。そのことを忘れて、資産価値が下落してしまうと、気がついたら、負債だけが残ると言う事があり得るのである。

 物価は、金利や利益、所得と、並んで、時間的価値を構成する重要な要素の一つである。物価は、金利や利益、所得を決定付ける中軸的要因でもある。

 時間的価値の代表的なものは、利益と金利と物価である。利益も金利もかつては、あまり道徳的にいいものとしてみられてこなかった。それが市場経済の発展を阻害してきた要因の一つでもある。

 景気は、時間的価値によって作り出される。時間的価値とは、金利であり、企業利益であり、物価である。景気の動向は、企業の経営実績によって決まる。つまり、適切な金利が取れて、利益が上がり、配当が出せて、物価に相当する賃金を払い、適切な税が払えて企業は社会的な貢献が出来る。
 今のように、金利がゼロで、利益が確保できない、また、リストラによって人員を減らさざるをえない状況というのは、経済的に良好な状態とは言えない。
 ある意味で、経済体制が崩れている状態だと言える。

 変化する部分、変化して良い部分、変化させる部分と変化しない部分、変化してはいけない部分、変化させない部分がある。
 変化というのは、時間価値を内包している。つまり、何等かの運動である。仕組みの中で可動して良い部分と悪い部分のことを指す。ただ、運動というのは、相対的な物である。何が何に対して変化しているのかが重要になる。

 物価にも、上昇する物価、横這いの物価、下落する物価、乱高下する物価があることを忘れてはならない。物価を形成するものは何かが重要なのである。

 物価は、何の関数か。物価を構成する要素は、何に、影響され、何に、結びついて変動するのかが問題なのである。そして、その個々の要素が何に影響を与えるのかが重要なのである。故に、物価を一律に捉えても意味がない。

 また、個々の問題で言えば、生産手段の変化によってどの様な内部構造の変化があったかである。

 大量に速く製造、あるいは、運べるようになったことで、貨幣価値を劇的に下げることが可能になったのである。

 それを可能としたのは、仕組みの変化である。仕組みの変化は、機械や組織という形で現れた。








                    


ページの著作権は全て制作者の小谷野敬一郎に属しますので、 一切の無断転載を禁じます。
The Copyright of these webpages including all the tables, figures and pictures belongs the author, Keiichirou Koyano.Don't reproduce any copyright withiout permission of the author.Thanks.

Copyright(C) 2001 Keiichirou Koyano